柔らかな月と、銀狼

□白の世界
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「ん」


目を開けると、空が真っ白なことに気付く。


「・・・んん!?」


何もない白に埋め尽くされた世界に、動かず、周囲を警戒しながら記憶を探る。

とりあえず、手足の感覚に異常はないので、五体満足であることは確かだ。

背中から伝わる感覚からして、最後の記憶、寝転がったままの体勢だ。


「やあ!くどくどくどくど考えてるけど、君はもうすこーし物事を軽く考えるってことを覚えた方がいいね!」


突如現れた、麗の頭を覗き込む男の顔に、跳ね上げるようにして体を起こす。


「ピンピンしてるね。ちゃんと落ち着くまで待っていてあげたいんだけど、そうもいかないんだよね。持って40秒ってところだから、手短に話すよ。

 細かいことはおいおい分かるだろうからそうだね、まずあちらに着いたら目の前の木に隠れなさい。隠れてそうだね、15秒数えたらしゃがんで、木に刺さったナイフを抜き取って腕を思い切り右に振る。次は左に跳んで、その木陰に虚があるはずだからそこに入って一日経つのを待つといい。

 なるべく人とは喋らないで、君を迎えに来る人がいるから、その人が来るまでは我慢するんだ。きっと大変な目に遭うけど、助けを寄越すから安心してね」


まだ男がなにか言おうとしている。でも変な浮遊感が気持ち悪くてそれどころじゃない。

鋭い耳鳴りの向こうで、男がゾッとするような笑みを浮かべた。

最後に動いた唇が呟いたのは多分───












───精々生きみろ、だ
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