科学者の持論

□第参話
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投獄前に瀞霊廷を思い切り破壊した



勿論直しはしたが、大勢の者たちが傷ついた・・・



見向きさえ、しなかった










暴れる彼女を止めたのは











浦原だった・・・










「フッ・・・お前が止めに入らねば死人が出たやも知れんな?」



「ご冗談を・・・姉さんはボク達が死なないよう加減していた・・・じゃなきゃぁボクが近付ける筈が無かった」



























瀞霊廷を破壊し続ける彼女に表情はなかった。


しかし、そんな彼女に近づいて、初めて感じたのだ。



彼女のまっすぐすぎる意思を。








後悔


懺悔


苦痛


希望


虚無






彼女は求めていた。



助けてくれと、表情には出さずとも叫んでいた。





父に何度も話を聞いた彼女。



何度も遊びに来てくれた彼女。



傷ついたって構わない。







それでも・・・





自分が、彼女を守りたい。






彼女の放つ霊圧が、どれだけのことを物語っていたか、知る者はいないだろう。




それでも、自分は確かに彼女の声を聞いたのだ。














『もう何年も生きてきた』



『この世界を創った』



『創造主とさえ崇められてきた』



『自分の父さえこの手に掛けた』



『その代わりに手に入れた物は何だ』



『自分の弱さ故の不完全な卍解・・・』



『いつでも、私は逃げてきた』



『だから』



『私の創った世界と』



『秩序の歪にさえ』



『気付かなかった』



『父様に顔向けも出来ない』



『どうすれば・・・どうすればいい・・・!!』



『今や一人となった私に・・・何が出来る・・・!?』



『壊せ・・・壊してしまえ』



『母様が生きていた・・・』



『混沌なる世界に戻してしまえばいい』



『待て』



『今を生きる者達を、如何する気だ・・・?』



『私の弱さ故に殺すのか・・・?』



『ダメだ』



『何時まで経っても私は一人』



『私が死ぬわけにも行くまい』



『新たな霊王が生まれるように』



『新たな“私”が生まれるやも知れん』



『その者に、私のような思いはして欲しくない』



『あぁ・・・私はあとどれほど生きれば良い・・・?』



『誰か・・・』



『私が壊れてしまう前に・・・』



『殺してくれ・・・!』



『誰か・・・』













『私を助けてくれ・・・!!!』





















「姉さん、ボクには姉さんを殺せません」



「・・・何だ?突然」




彼女が何もせず自分の腕の中にいるのをいいことに、少し抱きしめる力を強くする。




「ボクは姉さんの言葉を聞きました」



「・・・は?」



「瀞霊廷を破壊する姉さんを止めたとき、姉さんの力を肌に感じた」



黙り込む彼女に構わず、言葉を続けた。




「姉さん」



「ボクは、ずっと姉さんの傍にいますから・・・」




フ、と吐息を感じ彼女の顔を見れば、酷く優しい笑みを浮かべていた。



あぁ、と少し落ち込む。



彼女は、自分の思いを受け入れてくれない。



気付いてさえ、くれない・・・!






「喜助。


 そう言ってくれるのは嬉しいが、ダメだ」



「・・・」



「お前は、その体をいじるな。


 ・・・お前の考えなど手に取るように分かる。


 生有るものは必ず朽ちる。


 不老不死など、あってはならん。


 それに、」




“空しいだけだ”




「・・・」



彼女は本当の孤独を知っている。



この世界が出来る前から生きているのだから、当たり前だ。



それでも、自分は・・・




彼女の傍に、居たい。











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