科学者の持論
□第参話
1ページ/3ページ
投獄前に瀞霊廷を思い切り破壊した
勿論直しはしたが、大勢の者たちが傷ついた・・・
見向きさえ、しなかった
暴れる彼女を止めたのは
浦原だった・・・
「フッ・・・お前が止めに入らねば死人が出たやも知れんな?」
「ご冗談を・・・姉さんはボク達が死なないよう加減していた・・・じゃなきゃぁボクが近付ける筈が無かった」
†
瀞霊廷を破壊し続ける彼女に表情はなかった。
しかし、そんな彼女に近づいて、初めて感じたのだ。
彼女のまっすぐすぎる意思を。
後悔
懺悔
苦痛
希望
虚無
彼女は求めていた。
助けてくれと、表情には出さずとも叫んでいた。
父に何度も話を聞いた彼女。
何度も遊びに来てくれた彼女。
傷ついたって構わない。
それでも・・・
自分が、彼女を守りたい。
彼女の放つ霊圧が、どれだけのことを物語っていたか、知る者はいないだろう。
それでも、自分は確かに彼女の声を聞いたのだ。
『もう何年も生きてきた』
『この世界を創った』
『創造主とさえ崇められてきた』
『自分の父さえこの手に掛けた』
『その代わりに手に入れた物は何だ』
『自分の弱さ故の不完全な卍解・・・』
『いつでも、私は逃げてきた』
『だから』
『私の創った世界と』
『秩序の歪にさえ』
『気付かなかった』
『父様に顔向けも出来ない』
『どうすれば・・・どうすればいい・・・!!』
『今や一人となった私に・・・何が出来る・・・!?』
『壊せ・・・壊してしまえ』
『母様が生きていた・・・』
『混沌なる世界に戻してしまえばいい』
『待て』
『今を生きる者達を、如何する気だ・・・?』
『私の弱さ故に殺すのか・・・?』
『ダメだ』
『何時まで経っても私は一人』
『私が死ぬわけにも行くまい』
『新たな霊王が生まれるように』
『新たな“私”が生まれるやも知れん』
『その者に、私のような思いはして欲しくない』
『あぁ・・・私はあとどれほど生きれば良い・・・?』
『誰か・・・』
『私が壊れてしまう前に・・・』
『殺してくれ・・・!』
『誰か・・・』
『私を助けてくれ・・・!!!』
†
「姉さん、ボクには姉さんを殺せません」
「・・・何だ?突然」
彼女が何もせず自分の腕の中にいるのをいいことに、少し抱きしめる力を強くする。
「ボクは姉さんの言葉を聞きました」
「・・・は?」
「瀞霊廷を破壊する姉さんを止めたとき、姉さんの力を肌に感じた」
黙り込む彼女に構わず、言葉を続けた。
「姉さん」
「ボクは、ずっと姉さんの傍にいますから・・・」
フ、と吐息を感じ彼女の顔を見れば、酷く優しい笑みを浮かべていた。
あぁ、と少し落ち込む。
彼女は、自分の思いを受け入れてくれない。
気付いてさえ、くれない・・・!
「喜助。
そう言ってくれるのは嬉しいが、ダメだ」
「・・・」
「お前は、その体をいじるな。
・・・お前の考えなど手に取るように分かる。
生有るものは必ず朽ちる。
不老不死など、あってはならん。
それに、」
“空しいだけだ”
「・・・」
彼女は本当の孤独を知っている。
この世界が出来る前から生きているのだから、当たり前だ。
それでも、自分は・・・
彼女の傍に、居たい。
_