科学者の持論

□第伍話
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平穏な朝


差し込む光




そんな中で目覚めれば誰だって気分が良いもの。



しかし・・・




この女




坂井ルナだけは、酷く不機嫌な顔をしていた。




本を読んでいてそのまま眠ってしまったのだろう、近くに落ちていた眼鏡を取り上げ、掛ける。




鬱陶しそうに前髪を掻き上げたところで、怒鳴り声が聞こえた。





「じゃかァしァっ!!!」



ガッシャーーーーン!!!





「・・・・・・・・・・・・・もっと、年寄りを労わって欲しいものだがな・・・」





ボソリと呟き、彼女は白衣を纏う。



下駄をからころと鳴らしながら、研究室に向った。

















「・・・何事だ?」



「おぉルナ!あんたもコイツになんか言うたれ!!」



「・・・マユリも、ひよ里をからかうのは止めろ・・・」



「あァ、ルナ。起きたんだネ」





寝ぼけ眼で出てきた喜助も巻き込み、騒ぎは大きくなる。





「喜助、それはなんだ?」


「お、姉さん!おはようございます」


「あぁおはよう。で、それはなんだ」




彼の担いでいた物を指差せば、新しい義骸の試作品だという。




「今朝、平子サンから聞いたんスけどね、流魂街の住人が次々に“消えて”るらしいんスよ。

 あれは、人も形を保てなくなって魂魄が消えるんじゃないか、って」




「・・・ほう」



「仮にそれが本当だとすれば、分解しかけた魂魄をもう一度人型の器に入れれば、魂魄は消えずに済むんじゃないかと思って。


 その器を義骸技術を転用して作ろうとしてるトコっス」





「・・・・・・」





ふむ、と考えているところに、浦原に要請が入った。





「そういう訳なんで、ひよ理サン行ってください」








浦原がそれを諌める様



マユリが阿近から実験用具を受け取るところ。





日常が、崩れていく――――――










「緊急招集!緊急招集!
 各隊隊長は即時一番隊隊舎に集合願います!!
 九番隊に異常事態!―――――――――――――」

























ヒラ・・・ヒラ・・・





「地獄・・・蝶・・・?」



「・・・なんだネ。ソレは」





「・・・任務のようだな。年寄りを労われと言っておるのに・・・」





いつもと同じ、飄々として言う、ルナ・・・




「ルナ。本当のことを言うんだヨ!任務の内容はなんだネ!!」




「・・・落ち着け、マユリ」





彼女は溜息を吐いた。



長々と、深く。




「虚退治さ。

 嘘偽りなく、本当に」




「・・・このタイミングで?」




目を細める彼に、ルナは頷く。





「マユリ。少し長く現世にいることになりそうだ。

 ・・・これから起きることは予想できるが、お前に言うことは出来ない。



 しっかりやれ、涅三席。


 今この隊にいるのは、浦原とお前だけだ。



 できるだけ早く戻る。それまで、研究を怠るな」








それだけを言い、彼女は自室に引っ込んだ。















「・・・なんなんだヨ!!!!!!」














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