科学者の持論
□第伍話
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慌ただしく一日が過ぎていく。
時の流れが長い。
珍しく死覇装だけのルナが、そこにいた。
「拳西、ひよ理、真子、白、ローズ、リサ、鉢玄、羅武・・・。
罪を被せられるのは、私か、それとも浦原か・・・・・・何れにせよ、次の隊長はマユリ・・・か・・・・」
「よくお分かりですね、ルナ、さん」
「・・・あぁ、愛染。どうした?」
ニヤリと笑うルナだったが、その眼鏡の下に隠された瞳は、真っ直ぐに彼を射抜く。
冷笑を浮かべた愛染は、ゆっくりと口を開く。
「邪魔なんですよ、貴女は」
「っ!」
斬撃一筋
それは、かわすことを許されず
彼女の魂が
眠りにつく―――――――――――――――
†
十二番隊の隊舎に、いくつかの知らせが入った。
猿柿ひよ理
浦原喜助
そして・・・
坂井ルナ
ひよ理は消え
浦原は逃亡し
ルナもまた
消えた
「・・・」
新しい十二番隊隊長、涅マユリ
「・・・」
「・・・」
「・・・・・・・・・・・・・っ、ルナ・・・」
彼は今、ルナの部屋・・・否、“部屋だった”場所に、いる。
綺麗に、跡形なく片付けられた、彼女の部屋。
元々、彼女は存在していなかったのではないか。
そんな事を考えてしまうほど、塵一つない・・・生活感のない部屋。
そんな部屋の中央に置かれた机に、紙切れ一枚と、包みが置かれていた。
†
隊長任命おめでとう、マユリ。
これを見ている、ということは・・・私はもう、君の傍にはいないのだな。
残念だ。
さて、今回の件だが・・・見当はついているんだろう?お前は頭がいいからな。
直接言えないのが悔やまれるが、約束する。
皆を連れて、私達を利用した馬鹿者を仕置きしにいく。
その時、真っ先にお前に会いに行こう。だから、寂しがらなくてもいい。
そう、長くは掛からぬはずだからな。
お前に、私の白衣と、煙管ケースを預けておく。
あぁ、煙管は持っていくぞ。当たり前だ。
・・・捨てるんじゃないぞ?
私が困るからな。
白衣は、是非着ておいてくれ。
父の形見だが、清潔だし、丈夫だ。
・・・嫌なら燃やしてくれて構わん。好きにしろ。
ケースは、保管しておいてくれ。
絶対に、何があっても、捨てるな。
分かったな?
・・・ほんの少しだ。
じき、元の生活に戻れる。だから・・・・・・・・・・
決して、忘れないでくれ。
今まで有難う。
また、いずれ。
†
「クククッ・・・つくづく私を翻弄させる女だネ、お前は・・・。
いいだろう。待っててやるヨ。
百年だろうと千年だろうと、お前が帰るのを待ち続け・・・
泣いて跪かせてやる」
彼女は知らない。
彼女の残した手紙が
思いが
彼女の運命を
彼女の魂を
なにもかもごちゃまぜにして
捻じ曲げてしまうことを
彼女はまだ、知らない。
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