科学者の持論
□第陸話
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時が経つこと早三日。
この浦原喜助、ルナが抵抗をしないことをいい事に散々甘え倒した。
何時間もその腕に捕えていたり、膝枕だのもした。
お前等なんで恋人じゃないんだよと突っ込みたいほど、イチャついてやった。
・・・ルナは可愛い弟の甘えた期ぐらいとしか思っていないのは今回伏せておくべきことなのだろう。
なんとなく浦原も分かっていたが、彼は分かっていてそこを利用した。寂しかったのだとでも言えば彼女は少し困ったような顔をしながら、なんでもしてくれる。
あぁ勿論、部屋はちゃんと完成させた。
・・・悔しいことに、完璧といっていいほどの完成度だった。
「・・・本当に三日で出来たか。流石だな、浦原」
「褒めないで下さいよ、照れちゃうじゃないスか」
口ぶりは飄々としているがこの男。頬を紅く染めている辺り、本気で照れているのだろう。
そんな彼を微笑ましげに見つめ、彼女はよしよしとその頭を撫でる。
「/////」
(嬉しいんスけど、なんか・・・うん、気にしない気にしない)
店の地下に続く階段を浦原、ルナの順で降りていく。
・・・彼に見えないところで、ルナは少し寂しそうに、笑った。
「―――――ここっス」
「ほぉ・・・・・・」
平原、森、山、小川・・・
自然界を丸ごと詰め込んだような地が、そこに広がっていた。・・・擬似太陽まで有る。
「・・・腕は鈍っていないようだな」
「まぁ・・・」
「・・・」
「・・・」
どうしても、会話が続かない。
ルナの卍解
底知れぬ闇の化身とも言われる黒蝣を従える彼女は、自らの力を恐れ、封じた。
それを解放することでどんなことが起きるのかは正直分からない。
だからこそ、言いたい事は沢山あるのに喉に引っかかって出てこない。
「・・・予定通りに、頼むぞ」
「はい。姉さんをここに、幽閉します」
彼女は浦原に自分を幽閉するよう命じた。
何か問題が起きても、彼女を幽閉してしまえば外に被害が出ることはない。
「そのかわり」
「ん?」
「ここを出るときは、この部屋、盛大にぶち破ってくださいね。一回閉めちゃうと、開けられないんで」
ムスッとしながら言う浦原に、矢張り苦笑を浮かべるルナ。
ふわ・・・
「・・・・・・・・・・・・・・へ?」
腕の中に、柔らかい温もり。
ルナが、腕の中にいた。
(何故・・・?!)
浦原の方から抱きつくことはあっても、ルナの方からは決してしなかった、突然の抱擁。
「そんな顔をするな。・・・必ず、戻ってくるから」
「・・・はい」
温もりは、心地良い切なさと共に去って行く。
「・・・またな、喜助」
「・・・また」
バタン――――――
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