科学者の持論

□第漆話
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この部屋に入って、もうどれくらいになるのだろうか。




時間感覚は狂い、体力はもう殆どない。





常に斬魄刀を具現化させているのもあり、消耗は激しい。





荒い息をする彼女の目の前には、漆黒のドレスを身に纏い、妖しい笑みを浮かべた髪の長い女がいる。その瞳は濡れたように煌めく黒の色をしていた。










〔所詮はその程度か。やっと我を解放した思えばなんだその様は?反吐が出る。いっそのこと殺してやろうか〕





「・・・黙れ」




〔なんだ、図星か?〕





「・・・約束がある。まだ貴様にこの命をやるわけにはいかんのだ。さっさと私に服従しろ」




〔服従しろ・・・?フ・・・フハハハハハハハハハハハ!!!我を恐れて今なお尻尾を巻いておるくせによく言う!!


 貴様に力を貸してやったはいいわ、恐れを抱いて力を封じた貴様が、我に服従しろと・・・・・・片腹痛いわ!〕





彼女の言う通りだった。折角、父の命と引き換えに得た・・・守るために使うと誓った力を、自ら封じてしまった。




だが、もうこれ以上目を反らせ続けることは出来ない。






「不満であろうがなんであろうが、従って貰わねば困る」





〔貴様は我の主に相応しくない。貴様に一度でも従った我の落ち度だ。


 責任を持って、貴様を殺してやろう〕




「・・・・・・・・・・・」






ルナは自分の斬魄刀の言葉に、ニヤリと笑って見せた。





ゆっくり・・・非常にゆっくりと眼鏡に手を伸ばし、外す。そして・・・














グシャリ












握り、潰した。



割れたガラスが手に食い込み血が出るが、そ知らぬ顔。




目を覆っていた瞼がゆっくりと持ち上げられ、隠されてきた瞳が姿を現した。





それは黒蝣のものと同じ、漆黒の瞳。否、黒蝣よりも幾分か濃い色をしていた。







〔・・・〕



「確かに、私は恐れていた」




〔・・・〕



「お前が、怖かった」



〔・・・〕




「だが」



〔・・・〕














「私がお前の主であると決めた以上、お前は私に従うしか道はないのだよ」










〔――――っ、貴様・・・!!〕








ルナは懐から煙管を取り出した。





〔!!〕





彼女が煙管を持った手を素早く振り降ろすと、その姿は煙管から斬魄刀へと、姿を変える。







「うすうす気付いてはいたのだ」



〔・・・何を〕



「お前は、蜉蝣ではなく、“陽炎”だということ。

 私がお前の名をずっと間違え続けていたこと。



 そして私は、この刀身に力の全てを、封じ込めてしまったということ・・・」





〔!〕




漆黒の刀身が、ギラリと光を反射する。






「残念だが、鞘は置いて来てしまってな。信用できる者に預けてしまった」




〔涅マユリか〕



「矢張り知っていたか。まぁ、そいつだ」



〔・・・〕



「お前が浅打と何ら変わらぬ形であることに、何度も疑問を抱いたものだよ。


 本来の姿はこんなものではないと、容易く想像できたからな」




〔なら、お前はそれをどうする〕




「・・・こうする」





ニヤリ



愉快そうに彼女は口角を上げ・・・・・・刀を、自分の心臓に突き刺した。




















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