科学者の持論

□第捌話
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「イッチゴーーーーーー!!」





後ろから猛スピードで走ってくる男子生徒を蹴り飛ばし、オレンジ色の髪をした彼は面倒臭そうに挨拶を返す。



「よぉ浅野」



「ぬおぉぉぉぉぉ!!痛ってえええええええ!!」


「朝から元気だねー啓吾ー」


「み、水色おおおお」



非常に日常的な光景である。





「で?なんだよ」




見事な蹴りから回復したらしいしがない男子生徒A、またの名を浅野啓吾。



彼は目じりに滲む涙を拭いながらもハイテンションを貫く。




「聞いたか一護よ!今日ウチに転校生が来るらしいぜ!しかも女子生徒!!」


「はぁ?転校生?」


「そういう情報だけは早いね、啓吾。一体何処から仕入れてくるのさ?」


「へっへっへ、俺様の情報力、思い知ったか!」


「「どうでもいい」」



「・・・グスン」




つい先日にも、この学校に転校生がやってきた。



名を、朽木ルキア。




清楚な女子生徒である。



その言動は極たまに珍妙なことをしてはいるが、笑顔が素敵な女子生徒だ。







「どんな子だと思う?俺は断っっ然清楚なお姉様だね!」




「あー、確かにお姉さんはいいねー」



「・・・どうでもいいわ」











「あーー、そこの男子生徒諸君、職員室何処か知らん?」









男共のつまらない話を割る、涼やかな声。特徴の有る関西弁は上手く馴染み、違和感を感じさせない。






「んあ?それならこの館の一階の端だぜ?」



「おぉ、ほんなら通り過ぎてもぉたんやな。おおきにぃ〜」



「おー、行ってこーい」






自然だった。



凄く、自然だった。







「・・・ねぇ、啓吾?」



「何だ?」



「あの子・・・」



「・・・?」






全く分かっていない浅野に「見ねぇ顔だな」と現実を押し付ける一護。






「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・んんんんんんんんんんん!?


 ちょ、えぇ!?どんな顔だった!?」




「んー、良く分からなかったよ」




「眼鏡してたぞ?でっかくて丸い“瓶底眼鏡”」



「まさかの眼鏡っ娘ぉぉぉぉぉぉぉ!?」




「「・・・・・・・」」





クネクネと悶える浅野を放置し、二人は教室に入っていった。






















































「今日、転校生が来るんでしょう?楽しみだねー!」


「うんうん、女の子らしいよ!」


「うわぁ!」





「む・・・一護、転校生とは・・・誰だ?」


「俺に聞くなよ・・・」










ガラッ









生徒達の興奮と期待、興味の声を遮るかのように、扉が音を立てた。





「はーい、みんな知ってると思うけど、転校生が来てる。ホラッ、入って自己紹介!」


「はぁ・・・」





その女はひょっこりひょっこり、変な歩き方で入ってきた。


女なのに男子の制服を着て入ってきた。



短い髪を揺らしながら入ってきた。



大きな眼鏡をかけて、入ってきた。









「あぁ〜、どーも初めましてー。月酒優希(ツキサカユウキ)言います〜。よろしゅう頼んますわ〜」








カツカツと黒板に名前を書き、彼女は一礼した。





「そんじゃ、恒例の質問たーいむ」




担任の言葉により、上がる手、手、手・・・!!




「ど、何処出身ですか!?」


「関西の、京都や〜。あ、タメでええさかいな〜」



「あ、趣味は?」


「ん、読書とかかなあ?」



「好きな教科は!?」


「まぁ、いろりろやけど・・・やっぱ国語やろな」



「何で男子の制服着てるんですか!?」


「ん、楽やから?許可は貰ってんで?」



等等。




それらの質問に、ニコニコと笑いながら答える彼女。なかなかの好印象だった。




・・・が。






「顔見えねぇじゃんかよぉおおおうおうおうおうおう」




血涙を流す者約一名。






「んじゃ・・・あそこ。井上の後ろな」



「はいさー。えっと・・・井上さん、悪いけど手ぇ、あげてもらえへん・・・?」




「あ、はい!!」





ガタ!!





彼女は丁寧に(?)拳を上に突き上げ、立ち上がった。




「ん、おおきに」




普通の人間なら驚くか少し引くかはするのだが、彼女は笑顔のまま井上の後ろに座った。


眼鏡が邪魔で、あまり表情の変化が分からないのだ。






「じゃ、授業始めるぞ〜」







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