薔薇には茨
□その女、自己紹介
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ガタガタッゴトン!!
近所迷惑な雑音を鳴らすのは銀髪の『彼』。
場所?
勿論、寝室。
え、何故?
それは『彼』のベッドが埃まみれだったから。
何故埃まみれなのかって?
それはただ単純に、『彼』がベッドを使わないから
何故使っていないかって?
それは・・・この際割愛させていただこう。
え?そんなことを聞いているんじゃない?
何故、今この瞬間、『彼』が掃除をしている
のか?
それは勿論、落ちてきた『ヒト』を寝かせるためだ。
・・・起きて自分が棺で寝ているところなど見たら、流石に驚くだろうという、『彼』にしては珍しい配慮である。
バリンッ!!
・・・ガチャ
少々スッキリした風な『彼』が寝室から出てきて、『ヒト』をもう一度抱き上げ、ベッドに寝かせた。
「ヒッヒ・・・別段怪我もないみたいだし、後は起きるのを待つだけだねぇ・・・」
10分経過・・・
20分経過・・・
さんj「だあああああああ!!遅い!!!」
これだから人間は!と言う『彼』。
それは無茶というものだ。
「ん〜、見るなって言われたけど・・・
気、失っちゃってるし・・・いいよねェ?」
怪しく笑うと、『彼』はそ〜っと手を伸ばす。
(あともう少し・・・)
起きるのではないか、いや、起きないだろう。←反語
ちょっとしたスリルだ。
あと1o・・・
ガシッ!!
ビックウウウウゥ!
『彼』の手を、『ヒト』が掴んでいた。
「一体・・・ぬぁ〜にをしているんだい?」(黒笑)
「起きてたのかい?」
「話を誤魔化すんじゃないよ」
ピシャリと言われ、『彼』は冷や汗を浮かべた。
「い・・・いやぁ・・・するな、と言われたことをしたくなるのが、ヒトの性ってヤツさ〜」
「・・・ふーん・・・」
ミシリと、『彼』の腕の骨が軋む。
それは気にも掛けず、『彼』は話を続ける。
「そんなことより、起きていたのかい?違うのかい?」
「・・・いや、寝てたよ?」
「え・・・?
じゃあ何で・・・」
ニンマリ
そんな音が付きそうな笑みを浮かべ、ローズは言う。
「小生はちょ〜っと敏感なのさ〜
君みたいに、小生の顔を覗こうとしたりするチャレンジャーの気配には特にねェ・・・」
『ヒト』は『彼』の手を離すと、ベッドの上に起き上がった。
「・・・なんで君は顔を隠しているんだい?」
「さぁ、さっきの質問に答えようか。
『君は・・・』の続きは?」
『彼』の質問を思い切り無視した『ヒト』は、気を失う前に遮った質問の続きを促す。
「ん〜?」
(どうしたんだろうねぇ〜?)
あからさまに話を反らした『ヒト』に不思議そうな顔をした『彼』。
「質問は順番に、だろう?
ヒッヒ・・・心配しなくても、答えられる質問には答えるよォ〜♪」
ニヤニヤと笑う『ヒト』に、『彼』も同じような笑みを浮かべた。
「それじゃぁ・・・君は一体何者だぁ〜い?」
「いきなりだねェ・・・。見ての通り、只の人間さ」
「“只の”ねェ・・・?只の人間なら、あんな所から落ちてこないと思うけどォ〜?」
『彼』の突っ込みに一瞬黙り、ニンマリと笑ったローズ。
「ヒッヒ・・・流石に頭は切れるもんだねェ・・・ヒヒヒ・・・そうだね、小生は只の人間なんかじゃない・・・。
小生は、“異世界”の人間だよ」
「異世界・・・?グフッ、グフフ、ブヒャハハハッハハアッハハハッハハハハハッハハハハッハハハッハ!
い、異世界だってぇ〜?ヒッヒッヒ、面白いコトを言うねェ・・・?」
「ヒッヒ、自分でも驚きだよォ・・・。死んだと思ったら異世界に来ちゃうんだもんねぇ」
突拍子もない面白いコトを言っているのに、言葉遣いが自分と同じ所為か、ノりきれない。
「その言葉遣い、どうにかならないのかい?」
「ならないねぇ」
むぅ、と口をへの字にする『彼』に内心激しく萌えながら、彼女は平静を装う。
装っているだけで口元には変質的な笑みが浮かんでいるのだが。
「ん〜、君、名前はあるのかい?」
「ヒッヒ、一応人間だからねェ・・・。ローズ、とでも呼んでおくれ?」
「ローズ、ねェ・・・」
「君は?」
「へ?」
「君の名前だよ」
「あぁ・・・。小生は葬儀屋。アンダーテイカーと呼んでおくれ・・・?」
「ヒッヒッヒ・・・よろしく〜」
「こちらこそ〜」
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