宝を求めて
□プロローグ
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昔々ある貧困街に、両親のない小さな娘がありました。
娘にはお金がなく、食べるものも着るものもありませんでした。
最初のうちは我慢していたのですが、次第に我慢が効かなくなり、盗みをするようになりました。
時には人を殺して、お金や着るもの、食べるものを奪って暮らしていました。
ある日のことです。
少し離れたところから綺麗な音楽が聞こえて、彼女は音の方へと歩き出しました。
そこで彼女が見たのは、とても大きなテントでした。
初めて見たそれに最初のうちは警戒していたのですが、好奇心に勝てず、彼女はテントの中へ入って行きました。
『・・・・・・!!』
中では、綺麗な色の衣装を着たピエロがジャグリングをしたり、玉乗りをしたり。
大きな虎を女の人が操ったり、ドレスを着た人が綱を渡ったり。
見たことのない新しい世界が、そこにはありました。
そして、黒いシルクハットを被った男がピエロに椅子を持たせて登場しました。
『私は催眠術師のトリック。
私が催眠術を掛けますので、誰かお手伝い願える方はいらっしゃいませんか?』
不思議なショーを見に来ていた大人や子供、沢山の観客が一斉に手を挙げました。
『おお、これは素晴らしい。
しかし困りました、これだけ沢山の方に催眠術を掛けることはできません。
ピエロ君、君が私の代わりに選んできてくれたまえ』
催眠術師の言葉に大袈裟な身振りで頷いたピエロは、舞台から降りて観客席に歩いてきました。
全員、誰が選ばれるのか、あわよくば自分がこの素敵なショーに加わりたいと願っていました。
そんな期待にあふれる中、少女はジッとピエロを見ていました。
ポヨンポヨン、と変な音を立てて少女の目の前まで来たピエロは、そのホッソリとした手を彼女に差し出しました。
『可愛らしいお嬢サン♪お手を拝借☆』
これが、少女とファミリアツァルトの偶然と必然によってもたらされた出会いでありました。
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