宝を求めて
□依頼
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シャーーー・・・キュッ
静かな部屋に明かりが灯り、浴室から蒸気が逃げ、空気が湿気る。
バスローブを身に纏い、髪の水分をタオルで拭き取りながら、ソファーに沈む。
白いタオルから濃紺の髪が現れ、白金の瞳が目の前で低い起動音を立てるパソコンを捉えた。
「フム・・・」
『即座に連絡されたし』とだけ書かれたメールの差出人は不明。
連絡先もないというのにどうやって連絡しろと言うのか───
しかし、そのメールに慌てる様子を見せずにキーボードを叩く白い指に、迷いは無い。
「おやおや、ハンター協会の会長サンとはまた珍しい・・・☆」
一人呟いた彼女は携帯を取り出し、コールボタンを押した。
『・・・もしもし』
「ああ、ワタシ、“メール”を受け取った者デスが♪
こちらの番号で宜しかったデショウか?ネテロサン☆」
『おお、流石月影。仕事が速いの』
その名が呼ばれた瞬間、彼女の纏う空気が冷たくなった。
「月影への依頼でしたか?」
『いかにも』
「ほう。個人用のパソコンをハッキングしてまで、ハンター協会会長殿がわざわざどのようなご用件で」
『ああ、そのことじゃが、この電話でやりとりをするのはあまりにも心細い。
よければ直接依頼したいのじゃが、良いかの?』
「構いませんよ」
『では決まりじゃ。そうじゃな、二日後にワシの所へ来てもらえるとありがたいのじゃが・・・』
「時間の指定はありますか?」
『いや、いつでも構わんよ』
「畏まりました。では、二日後に」
プッ────
「・・・他の依頼を捌かないといけませんねぇ」
そう呟く彼女の瞳は、冷たい刃のように鋭かった。
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