宝を求めて
□いざ行かん試験会場へ!
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「くっくっく、立派なハンターか・・・・・・なめられたもんだな」
「この船だけで十数人のハンター志望者がいる。毎年全国からその数十万倍の腕ききがテストに挑んで、選ばれるのはほんのひと握り」
「狙う獲物によっては仲間同士の殺し合いも珍しくねェ職業だ。滅多なこと口にするもんじゃねーぜ・・・・・・ボウズ」
船に乗り込んだ少年浴びせかけられる言葉の数々は、互いに牽制し合うそれでもあり。
群がるそれらは険悪なムードを醸し出していた。
✡
──────ピカッ!!
「船長!!船底から浸水です!!」
「チィ!客席で転がってる役立たずのケツでもつめとけ!!
取り舵一杯!!飛ぶぞ!つかまれ!!」
うねる波に弄ばれる船は濁流に飲み込まれた一枚の木の葉のようだった。
揺れる、なんてものではない。いつ船が沈んでもおかしくないようなそれは、船内の乗組員の胃袋をかき混ぜ、船酔いを起こさせていた。
その中でも数人、あの荒波をものともしない者達がいた。
「はい、水だよ。この草かむと楽になるよ」
「・・・・・・」
「へっへっへ」
「〜♪」
子供が一人と青年が二人、奇抜な恰好をしてリンゴを弄ぶピエロが一人だった。
「ふふん。今年はちっとは骨のありそうな奴がいるようだな」
暫くして船内に流れた嵐の予告に、多くの乗客が恐れをなして船を降りていった。
「結局、客で残ったのはこの4人か。名を聞こう」
「オレはレオリオという者だ」
「オレはゴン!」
「私の名はクラピカ」
「ヘヨカといいます☆」
ハンターになる理由を尋ねる船長に、レオリオとクラピカが食って掛かる。
そんな二人を置いて、ゴンが手を挙げた。
「オレはオヤジが魅せられた仕事がどんなものかやってみたくなったんだ!」
「おい待てガキ!!勝手に答えるんじゃねーぜ、協調性のねー奴だな」
そう言いつつ答えを渋る二人に船長の言葉が刺さる。
彼の気分次第で試験会場に辿り着けるかも決まってしまう。
その言葉に、クラピカはクルタ族であることと復讐を、レオリオは金が欲しいと言った。
勝手に争い始めた二人は甲板の外に出て行ってしまった。
「まったく、勝手な奴等だ。・・・で、お前さんは?」
「ワタシですカ?」
「アンタ以外に誰がいる?」
「はぁ、いませんネェ♪」
「答える気があるのか?ねェのか?どっちだ」
ふざけた態度のヘヨカに船長が睨みを利かせれば、ヘヨカは一瞬無表情になり───ゾッとする様な笑みを浮かべた。
耳まで裂けたかのような三日月型のそれに、ゴンがぶるっと震える。
「ワタシは、旅芸人デス☆安全に、そして楽に旅がしたイ♪
・・・行けないところなんてあってはツマラナイじゃありませんカ☆それにワタシ、無一文デスしネ♪」
これでヨロシイでしょうカ?と人を食ったような邪悪な笑みを浮かべるピエロに、船長は頷いた。
「ねえねえ、ヘヨカさん」
「ハイ?」
「いままでどんな所を旅してたの?」
「オヤ、興味があるのデスカ?そうですn「船長!!予想以上に風が巻いてます!!」・・・・・・おやおや☆」
甲板を出ると、マストが重い風に吹き飛ばされ、船員が一人船の外へ投げ出された。
飛び出したゴンをレオリオとクラピカが掴む───が、
「「うわっ!?」」
雨と海水が二人の足を滑らせた。
「「落ぉぉちぃるぅぅぅぅぅーーー!!」」
「全く、困った方たちですネェ・・・♪」
ヘヨカの両手が二人の足を掴み、後方へ放り投げた。
「「「「うぅわあああああああああああーーーーーーーーーー!!」」」」
ドスン!!と重い音を立てて甲板に落ちた四人。安心したのかゴンを叱り飛ばす二人に、ヘヨカは腰に手を当てる。
「アナタ方も同じデショウ?助けるならちゃんとお助けなさいナ☆」
呆れと愉悦を含んだ声に、二人は黙り込み、ゴンは嬉しそうに礼を言った。
「くっくっくっはははは!!お前ら気に入ったぜ!
今日のオレ様はすごく気分がいい!!お前ら4人はオレ様が責任もって審査会場最寄の港まで連れてってやらぁ!!」
「あれ、でも試験は?」
「うれしくて忘れちまったよ。それより、舵取りの続きを教えてやる!!」
「うん!!」
✡
長い船旅を終えてドーレ港に降り立った一行。
チョイチョイ、と手招きされ、ヘヨカは船長に近寄った。
「何カ?」
「いや、お前さんにチィと頼みがあってな」
「頼みデスカ?しがない旅芸人でヨロシければお聞き致しますヨ★」
「ふ、しがない旅芸人だと?大ボラこきが!お前さん、ネテロ会長に雇われたヤツだろう?」
「はて、何のことヤラ♪」
「まあいい。頼みってえのはな、俺の船の乗組員にならねえかってことだ」
「ハァ、船の乗組員にデスカ?」
「もちろん、ハンター試験が終わってからで構わねえ。俺の船にゃお前さんのような奴がいるんだ」
ヘヨカは変わらぬ笑みを浮かべたまま、肩をすくめた。
「船は嫌いではありませんガ、ワタシは旅芸人デス★ワタシは道化師ヘヨカ♪自由な海の旅は素敵ですが、お断りシマス♪」
残念だ、気をつけて行けよと言う船長と別れ、ヘヨカは自分を呼ぶゴンたちの元へと向かった。
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薄暗く寂れた道を一本杉目指して歩いていれば、大勢の怪しげな人間に囲まれた。
「ドキドキ2択クイ〜〜〜〜〜ズ!」
細い目をカッと開いて言った老婆に若干引き気味の一行。
彼女のクイズに@かAで答えなければ、道を通さないと言う。相談を繰り広げる三人と傍観するヘヨカを一人の男が遮る。
「おいおい、早くしてくれよ。何なら、オレが先に答えるぜ」
港で船長がゴンに港から見える山の一本杉を目指せば試験会場に近道になると話していたのを立ち聞きしていたことをわざわざ言う男に、ヘヨカはクスクスと笑い声を立てる。
「何だ?」
「何でショウ?★」
「ちっ、薄気味悪い野郎だぜ!」
「おや、失礼な♪」
大袈裟な身振りで言うヘヨカを無視し、男は老婆に対峙した。
お前の母親と恋人が悪党につかまり、一人しか助けられない。
母親と恋人、どちらを助けるか?
人間性を問うかのような、それでいて答えの出ないクイズに、男は母親だと答えて奥へと進んで行った。
より一層、道化師の嗤い声が高まる。
激怒するレオリオに、何か気づいた様子のクラピカ。老婆は彼とヘヨカの口を封じ、先の男にしたのと同じような質問をした。
完全にキレた様子で棒を掴んだレオリオは、カウントダウンが終わると共に老婆に殴りかかる。しかしそれを妨害し、クラピカが『沈黙』という一つの答えを示した。
「その通り。本当はこっちの道だよ。一本道だ、2時間も歩けば頂上に着く」
「バアサン・・・・・・すまなかったな・・・・・・」
「何をあやまることがある。お前みたいな奴に会いたくてやってる仕事さ。がんばっていいハンターになりな」
「・・・・・・ああ」
レオリオが謝罪すると、ずっと考えていた様子のゴンが、どうしても答えがでないと笑った。
そんな彼に噴き出す二人が、このクイズの真意に触れる。
「ねぇ、ヘヨカならどっちを選ぶ?」
「ワタシですカ?息子と娘ナラ、どちらも助ケル★母親と恋人なら、恋人デス★」
「どうしてお母さんは助けないの?」
不思議そうな顔をするゴンに、ヘヨカはクスリと笑った。
「いない母親を助けるとこは出来まセンからネェ★」
慌てて謝るゴンに何のことはないと笑い、ヘヨカは先へ進むよう促した。
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「オヤオヤ★」
案内役─ナビゲーター─の家の扉を開けば、荒らされた家と魔獣に攫われた女。
ゴンとクラピカは魔獣を追い、レオリオとヘヨカは男の手当てに当たった。
「ヘヨカ、その人の体を支えててくれ、オレが応急処置をする」
「イイですヨ★」
ヘヨカは男の横に回り、肩を抱くようにして体を支えると、その耳元で囁いた。
「コレは黙っていた方がヨロシイのデスカ?凶狸狐─キリコ─サン?」
驚いた様子で見上げて来た男に、ヘヨカは含みを持たせた笑みを浮かべた。
男を励まし続けるレオリオに、ヘヨカは喉を鳴らす。
暫くして現れた魔獣二匹と女の種明かしに、何も気づかなかったレオリオがいっそう照れた。
「ヘヨカ殿は、私たちの正体を誰よりも早く見破っていた。その洞察力は実に素晴らしい」
ええ!と驚きを示す三人に、ヘヨカは肩をすくめた。
「あまりにレオリオさんが真剣そうだったので、言いそびれてしまいマシタ★」
「いや、言えよ!」
「中々素敵でしたヨ?」
「〜〜〜けっ!」
翼を広げたキリコたちは、夜の闇に染まった空を羽ばたいた。
✡
たいそう立派な建物の横に建つ料理屋が試験会場だと言うナビゲーターに半信半疑の一行は肉の美味そうな匂いをさせる店内に入った。
「いらっしぇーい!!」
「ご注文は────?」
「ステーキ定食」
「焼き方は?」
『弱火でじっくり』
「あいよー」
奥の部屋に通されたところで、ヘヨカが噴き出した。
「どうしたの?」
不思議そうに見上げてくるゴンに、ヘヨカは一層笑を深めた。
「いやァ、とんだ茶番だナと思いマシテ☆」
「え?」
「フフフ♪いやァ、実に美味しそうな匂いダ☆」
ナビゲーターが試験会場に至る者たちの倍率を告げ、一人去っていった。
むくれるレオリオに対して冷静さを欠かないクラピカはルーキーの合格率を数字的に教え、合格がいかに難しいかを説いた。
全く知識のないゴンの純粋な疑問に熱を上げたレオリオとクラピカが持論を展開させる中、一足先にステーキを完食したヘヨカが口を開いた。
「ゴン君☆どんなハンターになるかナンテ、なってから考えればイイんデスヨ☆
まずはハンター試験に受かることデス♪」
ヘヨカの言葉に納得したのか、ゴンは元気よく頷いた。
─────チン
エレベーターの到着を知らせる音に席を立ち、扉をくぐると、そこには広い地下道が広がっていた。吹き付けるような殺気が一行を襲う。
「君たちで406人目だよ」
太いパイプに腰掛けていた男が親しげな顔で近付き、「オレはトンパ」と自己紹介をした。
「あの、ヘヨカさん」
「ン?」
「ハイこれ、番号札です。見えるところに付けて下さいね」
「おや☆マーメンさんじゃないデスカ♪」
「お久し振りです。試験、頑張ってくださいね」
「アリガトウゴザイマス☆」
406番のプレートを受け取り、ヘヨカは胸につけた。
ツン、と鉄の臭いがしたかと思った瞬間、男の悲鳴が響き渡った。
「気をつけようね♦︎人にぶつかったらあやまらなくちゃ♣︎」
両腕をなくした男の前に立つ奇抜な恰好の男を視界に入れ、ヘヨカは小さく笑った。
奇術師ヒソカの説明を聞いたクラピカの「まるで道化師だな」という呟きに、ヘヘヨカが首を180度回転させ、顔だけをクラピカに向けた。
「ッ!」
「今、何と?」
「い、いや」
「あのヘンテコな奇術師が崇高なるピエロのようダと仰いマシタ?」
「す、すまない、気に障ったのなら謝る」
「全く、なってませんネェ。奇術師はピエロよりどちらかと言えばマジシャン★一緒にしないで頂けマス?」
「分かった。肝に銘じておく」
「結構♪」
首がフクロウ並みに回転したこととヘヨカから一瞬漏れた刺すような殺気に驚いた様子の三人に、同じく固まっていたトンパがいち早く回復し、四人に缶ジュースを差し出した。
「お近づきのしるしだ、飲みなよ。お互いの健闘を祈ってカンパイだ」
礼を言って受け取り、ゴンとヘヨカがほぼ同じタイミングで一気飲みした。
次の瞬間、変な味がすると言ってジュースを吐き出したゴンに従い、レオリオとクラピカがジュースを捨てた。
「あ、ヘヨカさん飲んじゃったの?」
「ハイ☆美味しかったデスヨ、トンパさん☆」
「あれー?確かに変な味したんだけどなあ」
「ゴン君のはハズレだったようデスネ☆」
「なーんだ、残念!」
トンパが謝って離れていったところで、ヘヨカがゆっくりと移動した。
何やらぶつぶつと言い地面を蹴るトンパの肩を叩くと、彼は分かりやすく飛び上がった。
「あ、ああ、アンタか。どうした?」
「ジュース、もう一本頂けマス?」
「お、おう」
トンパからジュースを受け取り、ヘヨカはニンマリと笑った。
「下剤は、もっと分かりにくいモノを入れるとヨロシイかト☆」
「!!」
「デハ、ワタシはコレで☆」
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