宝を求めて

□一次試験
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ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!



鳴り響いた鐘の音に、受験者達の間にある空気が緊張で張り詰め、太いパイプの上に立つ男に視線が集まる。


「ただ今をもって受付け時間を終了いたします。
 では、これよりハンター試験を開始いたします。こちらへどうぞ」


軽やかに地面に降り立った男は歩きつつ説明を始めた。


「さて、一応確認いたしますが、ハンター試験は大変厳しいものもあり、運が悪かったり実力が乏しかったりすると、ケガしたり死んだりします。

 先程のように受験者同士の争いで再起不能になる場合も多々ございます。それでも構わない────という方のみついて来て下さい」


非情な内容を再確認されてなおついて来る受験者に第一次試験405名全員参加が言い渡され、一次試験が開始された。

先頭を進む男─サトツ─が一次試験担当官であることを明かし、ただついて来るようにと言った。

人々が駆け足になる速さで歩くサトツの顔には汗一つ浮いておらず、何人かの受験者の顔に焦りが浮かんだ。

目的地も移動に必要な時間も明かされず、ただ出口を求めて走らされるという心身ともに大きな疲労を強いるこの試験に、知らず体に力が入る。

持久戦を覚悟したレオリオの隣を、スケボーに乗った銀髪の少年が通り過ぎて行った。


「おいガキ汚ねーぞ!!そりゃ反則じゃねーかオイ!!」

「何で?」

「何でっておま・・・こりゃ持久力のテストなんだぞ!」


怒鳴るレオリオに、冷静なツッコミが入った。


「違うよ、試験官はついて来いっていっただけだもんね」

「ゴン!!てめどっちの味方だ!?」

「怒鳴るな、体力を消耗するだけだ。何よりまずうるさい。
 テストは原則として持ち込み自由なのだよ!」

「〜〜〜〜〜っ」

「アハハ☆アナタ結構おバカさんですネェ♪」

「うっせーやい!」


ゴン、クラピカ、ヘヨカと三連続のツッコミに、レオリオは完全に拗ねてしまった。

銀髪の少年はキルアと名乗り、スケボーから降りて走り始めた。


「お見事☆」

「ありがと。アンタ、名前は?」

「ヘヨカです☆旅芸人をしています♪」

「ふーん。オッサンの名前は?」

「オッサ・・・これでもお前らと同じ10代なんだぞオレはよ!!」

「「ウソォ!?」」

「・・・・・・☆」

「あーーー!ゴンまで・・・!!ひっでー、もォ絶交な!!ヘヨカ、お前も変な顔すんなよな!!」


口角を引き下げ、目をかっぴらいたヘヨカにもレオリオは怒鳴る。

「ゴメンナサイ☆つい☆」と笑うと、ヘヨカは彼等に背を向けた。


「ゴン君とキルア君は心配ありませんネ♪レオリオさん、頑張ってくださいネ☆何なら同じ船に乗り合わせた縁で、おぶって差し上げてもイイですヨ☆」

「余計なお世話だ!オメーこそ、落ちるなよ!」

「モチロン☆デハ、お先に♪」


ぐ、と低く身をかがめると、地を強く蹴り、バネか何かのように一気に人を追い越して行ったヘヨカに、残された三人は目を見開くのだった。















ヘヨカが丁度階段を登り始めた時、隣から実に粘着質な声が掛かった。


「ねぇ、キミ♦︎」


水色の髪を後ろに流した、酷く奇抜な恰好の男、奇術師ヒソカ。

その男を視界に入れ、ヘヨカは少し眉を寄せて追い越そうとした──────が、


「つれないなァ♦︎声くらい聞かせてくれよ♥︎ 」


腕を掴まれ、引き寄せられる。


「離して頂けマス?」

「ダメ♥︎」

「困りましたネェ☆前に行けないじゃありませんカ♪」

「行く必要はないよ♣︎」

「個人的には試験官サンのスグ後ろがイイんですガ☆」

「僕と一緒に行けばイイ♦︎」

「ヤですよォ!同じようなキャラの人間が集まったってなあんにも面白くないじゃないでショウ?」


笑顔でピエロルックの男の足を踏みつけるが、男は恍惚とした顔でニヤリと笑うだけだった。


「・・・実に気持ち悪イ★」


奇術師ヒソカの予想以上の変態っぷりに内心引くが、勿論顔には出さない。

変わらない笑顔のまま、ヘヨカは一切の殺気を見せることもなく男の鳩尾に肘鉄を打ち込み、腕の関節をいくつか外して彼の手から逃れた。


「それでハ♪」


一瞬で後方の集団に紛れたピエロを見送り、奇術師は嬉しそうに笑った。


「思わぬ収穫だ・・・♥︎ココにあんなに美味しそうな果実がいたなんて♠︎」











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