宝を求めて

□一次試験
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「私をニセ者扱いして受験者を混乱させ、何人か連れ去ろうとしたんでしょうな。こうした命がけのだまし合いが日夜おこなわれているわけです。
 何人かはだまされて私を疑ったんっじゃありませんか?」


何人か心当たりのあるような顔をする受験生を傍目に、移動が再開された。
ぬかるんだ地面は受験生達の足をとり、体力を奪う。


「レオリオー!クラピカー!ヘヨカー!
 キルアが前に来た方がいいってさー!!」


霧の向こうから聞こえてくるゴンの声に、レオリオが出来たらそうしていると叫び返した。

周囲から悲鳴が聞こえ始めたとき、突然前から何かが飛んできた。


「ってえーー!!!」

「ちょっとクラピカ君を見習ってかわして下さいよッ!!」


彼等の周りにも何人か倒れていたが、幸い何かがトランプとの間のクッションとなり、致命傷を負った者はいないようだった。
前方から人影が笑い声と共に現れた。


「てめェ!!何をしやがる!!」

「くくく♦︎試験官ごっこ♥︎」


一次試験がつまらないから自分が選考作業を手伝うと言いながら殺気を撒き散らす奇術師に、一人の男が取り残されたお前も不合格者だと叫んだ。


「失礼だな♠︎キミとボクをいっしょにするなよ♦︎
 冥土の土産におぼえときな♣︎奇術師に不可能はないの♥︎」


各々武器を構えたのを見て、ヘヨカは隠すことなく溜息を吐いた。


(私の仕事を増やさないで下さいよもう・・・)


「殺人狂め、貴様などハンターになる資格なんてねーぜ!」

「2度と試験を受けれないようにしてやる…!!」


怒鳴る男たちに、ヒソカはハートの4のカードを見せた。


「君たちまとめて、これ一枚で十分かな♣」


いきり立つ受験者達を軽く無視して、ヒソカの呼吸に息を合わせる。
彼が一歩踏み出すよりほんの数秒早く、ヘヨカの姿が消えた。


「・・・ん?」


ヒソカから少し離れたところでヘヨカも立ち止まった。

手に感じた違和感を探るように手首を動かし振り返ったヒソカの前には、殺したはずの受験者達がうめき声を上げながら横たわっていた。

それぞれ傷だらけになってはいるが、全員息があった。


「キミかい?」

「血が苦手なものデ★」


トランプを手にするヒソカとは反対に、ボールを弄びながら笑うヘヨカ。


「ここから先誰も殺さないと約束してくれたらワタシ、失せますガ?」


少し考える様子を見せた彼が頷くのを見、手に持っていたボールの一つを投げ渡す。


「何?コレ♦︎」

「まあワタシの一部的なものですヨ★ソレの正体はご存知でショウ?」

「まあね♥︎」

「約束ですヨォ?」


ニンマリと笑ったヘヨカは、レオリオ達に目配せしてその場から消えた。















「二次試験会場はそろそろですカァ?」

「さあ、どうでしょうねえ」

「もうちょっとペース上げまセーン?」

「ええ、上げませんよ」

「・・・サトツさんは生真面目でつまらないなアー」


たくさんの星が描かれたカラフルな五つのボールを弄びながら、サトツの横に移動する。


「いつもの方がよっぽど茶目っ気があって可愛いや」


小さく呟かれた声に彼は苦笑し、ヘヨカを見た。


「貴女は今のほうが可愛らしい」

「きゃっ照れちゃいマス☆」


ニッコリと笑ったサトツに、ヘヨカも笑い返す。
道化師が目元を覆う仮面に感謝していたことは誰も知る由がない。
ましてや、その下に僅かに赤くなった頬が隠れていたことなど、誰が気付いただろう。











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