宝を求めて

□二次試験
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やっとのことで湿原を抜け、二次試験会場、ビスカ森林公園に着いた。


「みなさんお疲れ様です。無事、湿原をぬけました。ここ、ビスか森林公園が二次試験会場となります。

 それじゃ私はこれで。健闘を祈ります」


そう言って去り行くサトツにはもう誰の関心もなく、目の前の建物からする音に釘付けだ。


「ちょっちょっちょ、サトツさんまさか正午までまだ時間があるのにここから離れるつもりですカ!?」


一人集団を離れて追ってきたヘヨカに振り返り、サトツは勿論そのつもりだと返した。


「いや、いや☆せめて正午までいましょうヨ♪」

「何故です?」

「仕事を軽減化しようと思って変態に喧嘩売ったので盾になって頂きたいのですガ☆」

「残念ですがお断りします。二次試験、頑張ってくださいね」

「・・・死んだら化けて出ますからネェ?」

「ヘヨカさんなら歓迎いたしますよ」


それでは、と消えたサトツに、ヘヨカはがっくりと肩を落とした。

今すぐ職務放棄したい気分だったが、仕方なく集団に戻り、扉の向こうから聞こえる獣の唸り声にも似た音に耳を傾ける。



グイッ



「うおっ!?」

「捕獲成功♥︎」

「ヒィッ・・・ソカさんじゃありませんか★何の御用デ?」

「んん〜、妬けちゃうなあ♠︎さっきはあんなに熱い告白してくれたのに、さ♣︎」

「いやあ人違いもここまで来ると恐ろしいものがありますネェ・・・どなたです?貴方に告白するなんてチャレンジャーは?
 一緒に探しましょうカ?」

「ここにいるからその必要はないよ♥︎」

「おやここにはワタシしかいないようにお見受けしますガ?」

「ボクもう興奮しちゃって・・・♥︎分かるかい?キミの所為でこんなにも「それ以上言ったらぶち殺しますヨ★腰を押し付けるナ」」


変態に背後から抱きしめられている状態に耐えかね、ヘヨカは身をよじる。

何がどうしてこうなったのか。必死に解決策を探すが、後ろが気になって気が狂いそうだ。特に下腹部。


「全く、何がしたいんですか貴方ハ・・・」

「え?何ってナニに決まって「ハハハ聞こえませんネェ!」・・・ツれないなあ♦︎」


思い切り許容範囲外の出来事に頭を抱えるが、どうにも離してくれる気配がない。諦めて身を委ねるなんてのはもっての他だ。貞操の危機を感じる。

早々に責任転嫁することにしてこの場を離れたサトツを恨んだ。

まずこの変態の思考回路がどうなっているのかわからないので、どうにか離れようとする。


「どこに行くつもりだい?」

「とりあえず貴方のいないところですかネ?」


ニコニコとどちらも譲る気はなくただ見つめあう。
受験者の多くには見えない戦いをしているのだが、やはり決着はつかず平行を辿るばかり。

そんな時、試験会場の扉が開いた。

天の助けとばかりにそちらを向くが、ヒソカは特に気にした風もなくヘヨカを抱く腕に力を込めた。

傍から見ればイチャついているだけだが、一人はヘヨカの殺気に中てられた変態ともう一人はその変態に束縛され逃げ出そうにも逃げ出せない哀れなピエロだ。

ジタバタとしている内に試験内容が告げられ、周りの受験生達が駆け出した。
その中にレオリオ達の姿を見つけ、思わず叫ぶ。


「レオリオさーん!クラピカくうーん!ゴンくーんんんんへールプミー!」

「何してんだよお前・・・!」

「お題は豚の丸焼きだそうだ」

「ヘヨカってヒソカと仲良いんだね!」


わざとだろうか。わざとに違いない。
爽やかな笑顔で去って行った三人に、ヘヨカの頬が引きつった。


「やっと二人きり・・・♥︎」

「ヒイイ・・・!」


殺気駄々漏れで嬉々とした表情をするヒソカに、ヘヨカは自分の選択ミスを恨んだ。
こんなことならアホな受験生など放っておいてヒソカを自由にさせるべきだったのだ。

ボールに変化がないことから人を殺していないのは確か。つまるところ彼は欲求不満なわけで。仕舞いに約束など無視して彼は手ごろの人間と戦り合おうとするだろう。

事実試験官たちに向けられている殺気と来たらそれだけでもそこそこ濃密だ。

若干お前何とかしろよ的な視線を感じないでもないが、こんな変態はこちらこそ願い下げである。


「・・・先に、豚を仕留めた方が相手の言うことを一つ聞く、というのはどうでス?」

「いいね、それ♣︎」


この男のことだ、要求してくることなど高が知れている。
そう判断したヘヨカは、最も軽率で愚かな取引を奇術師と交わしてしまった。















「・・・」

「お帰り♦︎遅かったね♠︎」

「・・・」


別れた場所でいかにも食べごろな具合に焼かれたグレイトスタンプを担いだヒソカに迎えられ、ヘヨカはその場に崩れ落ちた。


「ウソだあああああああああああああああッ!!!」


ばんばんと地面を殴りつつ、片手で豚に砂がつかないよう持ち上げているヘヨカはどこから見ても哀れで滑稽だった。


(・・・これはもうあれだ報酬とかいらないや。いっそコイツを殺して・・・)

「物騒だね♠︎まあボクはそれでも構わないけど♦︎」

「心を読むなっ!」


そこそこ本気で狩ったハズなのにこの仕打ち。憎憎しい豚を睨みつけるが、豚はこんがりと焼けたまま食べられるのを待っているだけだ。

ブハラが嬉しそうに食らいついている豚になりたいと現実逃避をしていると、再びヒソカに掴まった。

抱きしめられることは回避したが、磁力で接着しているかのように離れる様子のない、掴まれた腕を見つめて溜息を吐いた。


「参りましたネェ・・・そこまでしてワタシに何をして欲しいんデス?」


観念した様子のヘヨカに、ヒソカは実に嬉しそうな顔をした。


「それじゃあ・・・ボクがいいって言うまでボクから離れないこと♦︎」

「え、何ですかそれ拷問」

「約束、ダロ?」

「・・・」


絶望的な顔をしたヘヨカがまず思ったのは、とりあえず依頼者を半殺しにすることだった。
そして次に、この戦闘狂を生かさず殺さず痛めつけて逃げようということだった。


「・・・良いでショウ!男に二言はありませんヨ!」

「キミは女だろ♣︎」

「くぁwせdrftgyふじこlp!?」

「凄くイイ抱き心地だったよ♥︎」


別に隠していたつもりはなかったが、この男に言われるとなんだか悪寒が止まないヘヨカだった。










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