宝を求めて

□二次試験
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星空の中をふわりふわりと、わずかな起動音を立てながら飛行船は行く。

そんな船内の一つのテーブルで、三人の試験官が膝を突き合わせていた。


「ねェ、今年は何人くらい残るかな?」


二次試験の試験官、メンチが肘をつきながら問いかけるように首をかしげた。


「今年の合格者ってこと?」

「そ」


肘をついてブハラに答えたメンチはサトツにも意見を求めた。

新人がいいと答える彼に、メンチも294番の「忍」を名乗るハンゾーという男を推した。ブハラは密が気になると言い、44番、ヒソカの殺気を話題に上らせた。


「255番の人がキレ出した時、一番殺気放ってたの実はあの44番なんだよね」

「もちろん知ってたわよ。抑え切れないって感じの凄い殺気だったわ。

 でも、ブハラ知ってる?あいつ、最初からああだったわよ。あたしらが姿見せた時からずーっと。あたしがピリピリしてたのもじつはそのせい。

 あいつ、ずーーっとあたしにケンカ売ってんだもん」


「私にもそうでしたよ。彼は要注意人物です」


サトツは、ヒソカを普通ブレーキをかけるところでためらいなくアクセルを踏み込めるような異端児だと称した。


「ヘヨカがいるってことは、ネテロ会長の根回しなんだろうけど。今のところ、あいつによる死人はゼロらしいわよ」

「角煮美味かったなぁ〜!」

「元気そうで何よりですが、どうやら彼女は44番による試験受験者、試験官殺害防止策として呼ばれたようですね。嘆いていましたよ」


三者三様、頭にヘヨカを思い浮かべ、あるものは苦笑し、あるものは笑み、またあるものは心配そうな顔をした。


「彼女の血が流れることなく終わればいいのですが…」

「「確かに」」















まさか三人の試験官の話題になっているとは露知らず、ヘヨカは一つくしゃみをして部屋に居座る男を睨んだ。

船内の空室を独占しようとしていたところについてきたヒソカを追い出すことに失敗したヘヨカは、汗を流したい欲望と目の前の男とを天秤にかけ、迷っていた。

ぶっちゃけ貞操の危機を感じる。


「一体、いつまでつきまとうツモリなんです?」

「キミが僕とヤッてくれる気になるまでさ♥」

「…そうデスか」


もういいや、とばかりにヘヨカは浴室に進んだ。当然のようについてくる男に、ほんの少しだけ殺気を向ける。


「萎える」

「むしろボクは滾るケド?」


好きにしろとばかりにヘヨカは豪快に服を脱ぎ、どういう構造をしているのかはわからないが、すべて帽子の中に入れてしまった。

白い肌を目の当たりにしたヒソカは無遠慮に彼女の体を見つめた。


「キレイだ♣」

「そりゃドウモ」


通常より広めかと思われる浴室に入ると、裸になったヒソカがついてきて、労災は降りるのだろうかとぼんやりと考える。

嬉しそうにヘヨカの髪を洗い始めたヒソカに、溜息を吐く気力もなくして身を任せる。


「綺麗な髪だ」

「あっそうデスか。何がそんなに楽しいのか、ワタシには分かりまセンがネ」

「アァ…キミはどんな闘い方をするんだろうネ♠キミを壊す瞬間が楽しみだ♥」

「…悪趣味な」


素直に全身くまなく洗われると、ヘヨカは浴室を出てバスタオルをまとった。乱雑に体と髪を拭くとベッドに身を沈めた。


「オヤ♣もう寝るのかい?」

「ええ、邪魔はしないでくださいね」


警戒心を少しも見せずに目をつむったヘヨカに近づくと、ヒソカは堪え切れないとばかりに喉を鳴らした。


「熟れる寸前の果実…か♦」


ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、と僅かに殺気を漏らしながら手を伸ばすと、伸ばした手は獲物に触れることなく、空中で止まった。

否、正しくは止められた。

彼の手を止めたのはヘヨカの手。眠そうに唸ると、彼女はヒソカの手を握り自分の隣に引きずり込んだ。


「♥」

「大人しく『待て』もできないんですか…?ほら…いい子にしてたら『ご褒美』あげるから…ね…?いい子、いい子…」


しばらくヒソカの頭を撫でると、彼女はまた寝息を立て始めた。


「クック…クックククククク…いい子いい子、されちゃった♠キミに初めて盗られちゃったよ♥

 ネェ?ヘヨカ」












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