貴方が、居るから

□新しい依頼
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   「L、FBIから『エラルド・コイル』に依頼が来ております」


   「・・・こちらへ回してください」




 ほこほこと湯気の立つ紅茶の味を掻き消すかのように幾つも角砂糖を入れる彼。


 太らないのか、とどうしても言いたくなってしまう細い四肢。


 彼に言わせれば、頭を使っているから太らない、だとか。



 糖尿病にでもなるのではないだろうか・・・?



 体育座りのような特徴的な座り方をして彼が覗くのは、一つのパソコン。




   『L』




 世界に名を轟かせる若き彼に



 運命を変える事件が



 舞い込んだ・・・










   「連続誘拐事件・・・それも子供ばかり、か」


   「そのようですね・・・この一週間で十人」



 彼らが見ているのは、事件に関する資料。


 月曜日に二人、火曜日に一人。

 水曜日には二人、木曜日と金曜日、土曜日がそれぞれ一人ずつ。


 日曜日に二人・・・

 それが、殆ど毎週だ。



 場所は、イギリス、ロンドン。



 時間帯は朝〜深夜までと、24時間体制で拐ってくれている。

 証拠、0・・・


 しかも、居なくなった子供達は帰ってこない。
 殺されたか、そもそも今生きているのか。



 ガリ、とLが爪を噛んだ。



 何時もなら、そう・・・何時もなら、これといった感情もなく、直ぐに頭を働かせるのに。


 今日は、少し違うようだ。



   「・・・胸糞が悪い、というのはこの事でしょうか」


   「・・・」


 ほう、なんとまぁ珍しい。

 あのLが、『胸糞悪い』とは・・・



 軽く目を細めたワタリ。

 がしかし、次の瞬間にはLの命に従い、車の手配をしていた。



  「今回は、私が直接出ます。

   ワタリ、車を」



 本当に、今日はいったいどうしてしまったと言うのだろうか。

 彼が・・・『L』が、世間に顔を晒してまで事件の解決に乗り出すなんて。

 どういうつもりだろうか



 気紛れ、だろうか・・・?


 用心深い彼のこと、それはないだろう。




   「宜しいのですか?」



   「そう言った筈だ。

    あと、イギリス行きの航空券を準備しておいて下さい」


 こうなっては仕方がない。


 Lはなかなかの・・・否、筋金入りの頑固者だ。


 精々、お守りせねば



   「何をしているんですかワタリ。

    時間はいくらあっても足りませんよ」


 今この瞬間にも、被害者が出ているかもしれない。

 依頼を受けた以上は、全力でかからねば。



   「畏まりました」


 Lが、久し振りに生き生きとしている。


 其ほどまでに、この事件は厄介だ、ということだろう。



 拐われた子供達の行方は?


 犯人の動機は?


 24時間体制で子供を拐っているのに、何故目撃者が一人もいない?


 大量のFBI捜査官と監視カメラから隠れて、どうやって拐っている?


 何故、何の要求もしてこない?





 問題をまとめ、細分化して。
 

 360度から光をあて、答えを導きだす。







   「必ず、解決して見せます」




§

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