Der SuehIussel des Mondes
□平和な日常
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《ヒャッハハハハア!どぉうする?テメエの攻撃でガキが死んじまうぞぉ?》
ケタケタと笑うサタンだったが、それでも里沙の目に揺るぎはなかった。
「無駄よ。私の娘に貴方の炎は効かない。
いつか来ると分かっていて、私が何もしないとでも?馬鹿にしないでちょうだい」
#NAME2##の体は崩れることなく、サタンの憑依にもどういうワケか耐えていた。
想定外のことに、サタンの顔が激しく歪む。
「分かったらさっさと出て行きなさい。そして帰るのよ、虚無界へ」
《キッ、サマアアアアアア!》
サタンが炎を向けるのと、里沙が何かを投げつけるのは同時だった。
全てがコマ送りのように映る。
里沙は直人を庇いながら炎を避け、サタンは投げつけられた何かを避けようともせず立ち向かって行く。
サタンの体が玲のものである所為か、里沙はどうしても防戦を強いられていた。
ザシュッ
嫌な音と、悲痛な叫び声。
一瞬の静寂が、辺りを包み込んだ。
「おね・・・ちゃ・・・?」
玲の心が悲鳴をあげ、大きく軋んだ。
里沙の叫びも空しく。サタンは口元を吊り上げた。
そして、里沙の顔が歪むのとソレは同時に起きた。
「カハッ」
腕を生温かいナニカが濡らし、目の前で紅い花びらが散った。
血を吐く里沙は、玲の頬に手を沿え、優しく笑った。
一切の傷みを見せない、力強い笑みだった。
「だいじょうぶよ、玲」
一瞬のうちに炎が里沙を飲み込み、その体は地面に投げ棄てられた。
玲の心の柔らかい部分が抉られ、血を流し、悲鳴を上げた。
「・・・あ、ああ・・・」
その口から、サタンのものではない声が零れ落ちた。
玲の目に、異様に大きく映える真っ白な月が映りこんだ。
───玲、貴女のパパはとっても凄い人なのよ?
───すごい?
───ええ。お月様の秘密を知っている、とっても綺麗で優しい人。
───いま、どこにいるの?
───さあ、どこかしらねぇ・・・。きっと、どこか高いところで、私たちと同じ月を見ているわ。
優しい顔で父のことを語った里沙と、小さな直人と見た月が、強烈なフラッシュバックを引き起こした。
(───パパ、お願い。ママを、直人を、助けて・・・!)
サタンが嬉々として森に火を放つのを片隅に、玲の意識はどこか暗いところに閉じ込められた。
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