本丸
□白妙菊 《花鳥風月+姥蜂♀》
1ページ/4ページ
ー 虎徹家 リビング
「お風呂上がったよ、姉ちゃん。すぐ入らないなら、蓋閉めてくるけど」
「すぐ入るから大丈夫だよ」
浦島はソファーの上にいる姉に声をかけた
姉である蜂賀はテレビを見ながら何かを食べていたが、その手を止めて浦島に答える
「あれ?姉ちゃん、それ見たこと無いけど、新商品?」
「うん。今日コンビニ寄ったときに見つけて買ってきたんだ。浦島も食べてみるかい?」
「うん。ちょうだい」
蜂賀は浦島へ菓子の小袋を1つ渡すと、着替えを取りに自室へ一旦戻っていった
貰った菓子を口に入れた浦島はその味に首をかしげる
「...姉ちゃん。これ何?姉ちゃん的には美味しいの?」
「みかんのチョコなんだけど。味は、正直俺も微妙だと思っている」
着替えを手に戻ってきた蜂賀に聞くと、苦笑いしながらそう答えた
蜂賀は食べ物を無駄にするのは良くないと半分くらいまで食べたが、『あとは話の種として宗三さん達に持っていこう』と冷蔵庫に安置する
別名、ギブアップ
「あ、浦島。アイスも買ってきてるから好きなの食べていいよ」
「ほんと?やった!何あるの?」
「あまり寝る前に食うと太るぞ」
冷蔵庫の前で姉弟が楽しそうに話しているとカチャッとリビングのドアが開き、二人の兄に当たる長曽祢興里が顔を出した
「おかえり、兄ちゃん」
「うるさい、産業廃棄物」
興里は前妻のこどもで、前妻の再婚の際に虎徹家にやってきた
当時小学生であった浦島はすぐに兄と受け入れたが、中学生という多感な時期であった蜂賀は当然拒否し、現在も反発している
「あのなぁ…別に兄と呼ばなくていいから、産廃はやめてくれ」
「......お風呂、入ってくる。遅くなって長曽根汁に浸かるのは嫌だから」
プイッと視線をそらすと、蜂賀は脱衣場へ向かっていった
「兄ちゃん。家族とはいえ女子に『太る』は駄目だと思う」
「軽い冗談だったんだが」
「兄ちゃんの知り合いの女子なら大丈夫だろうけど、姉ちゃんは無理。ただでさえ婆ちゃんに箱入りに育てられてるんだから」
蜂賀と浦島は幼い時に母を亡くし、母方の祖父母に育てられた
勿論浦島のことも可愛がってくれたが、母親に瓜二つの蜂賀は祖母に溺愛され『蝶よ花よ』と溺愛されている
「......反省している」
浦島に正論で返され、興里は身を小さくした
一方、蜂賀はというと
「(だからデリカシーの欠片もない長曽根は嫌なんだ。ちゃんと動いてるから太るわけないし。...あっ)」
鏡の前で髪を解かしながらプリプリ怒っていた
ふと、放置され若干埃を被った体重計が目にはいる
「(最近計ってないけど、大丈夫だと思うけど...たまには、計ろうかな)」
雑巾で軽く拭き、蜂賀は体重計に乗った
目盛りの数字が動きだし、ある数字を表示して止まる
「・・・嘘!」
目盛りは蜂賀がキープしているはずの重さから数キロ重い表示していた
「(やばい、痩せなきゃ)」
ダイエットを決意した蜂賀は、まず楽しみにしていた湯上がりのアイスをパスしたのだった