本丸

□紫羅欄花 《三条+五条》
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「おや...?全員止まってくれるかい」


無事に資源を発見したが、まだ時間があるため引き続き資源を集めていた時のこと

副隊長を務めていたにっかり青江は停止を指示する


「何か見えたのか、にっかり青江」

「フフ、あれはいけない子達だねぇ。...時間遡行軍のことだよ」


一応遠征とはいえ索敵をしていた青江が進行方向にいる敵の存在を知らせた


「...争いは嫌いです。避けられないのですか...?」

「んー、無理だろうねぇ。進行方向ど真中だから、ね」


出陣ではない為、戦闘を避けたい江雪左文字が訊ねるが、青江は首を横に振る


「なら、仕方ねぇな。打って出るぞ!俺が道を作ってやる!」

「ぼくもつづきますよ!そーれ!」


腰から自身の本体である短刀を抜き、薬研藤四郎と今剣が敵の前に躍り出た

二振は白刃を閃かせ、敵を屠っていく


「がはははは!短刀ばかりに頼ってはおられんな。...さあ!俺を楽しませろ!」

「 和睦の道は……ないのでしょうか…… 」

「フフ、みんなやる気だねぇ。...さぁ、やろうか。熱く高ぶる戦をさ」

「俺が出遅れるわけにはいかないな。・・・恨みは無いが、主命だ。死ね 」


それぞれも続くように本体を振るい敵を斬り伏せていった

ある刀は力強く、またある刀は舞うように...時に仲間に背を預け共闘し、時に仲間に助太刀する

刀派や刀種を越えた絆がそこにあった


「・・・ふむ、すべて狩り終わったようだな」

「つっかれましたねぇ」


最後の敵を斬り伏せると、各々安堵の溜め息をもらす

しかし、その安堵もつかぬ間のこと

突如感じた気配に全員ゾクリと肌が粟立つ


「おいおい、ここで検非違使かよ。遠征だっつーのについてねぇな」

「そのような報告は、上がってなかったはずですが...」


検非違使とは、歴史を守る審神者率いる刀剣男士と歴史を改変しようとする歴史修正主義者率いる時間遡行軍...時を越えるものとしてそのどちらも狩る異質な存在

強さは部隊の一番強い者と同等で、厄介な存在であった


「とりあえず僕達はまだ彼等の標的になっていないから、見つからないよう静かに、ね。・・・まずは隊長の意見を聞こうか」

「...本来なら主に仇なす存在は倒すべきだろう。だが・・・今回はここで遠征を終了とし、帰還する」


長谷部は本丸へ帰還を決める

元々遠征のつもりだったこの部隊は、出陣の部隊と異なり錬度を揃えていない上、刀装も充分ではない

また、先程の歴史修正主義者との戦闘の際に軽いとはいえ傷を負った刀剣もいる

万全の体勢でない以上、戦いは避けるべきとの決定を下した


「にっかり青江と今剣は帰還ゲートまでの道の索敵、薬研藤四郎は検非違使の動向を監視し何かあれば報告を怠るな」


「わかりましたぁ!さぁ、にっかり やりますよぉ!」

「フフッ、了解。僕たちで丸見えにしてしまおうか。・・・敵陣のことだよ」

「おう!検非違使の監視は任せろ」


長谷部の指示に今剣・青江・薬研の三振は返答する


「江雪左文字は俺と一緒に三振の護衛。岩融は...すまない、殿を頼まれてくれるか?」

「承知、いたしました」

「うむ。それが妥当だろう。お主は隊長としての役目がある。殿は俺に任せておけ」


検非違使が追ってきた場合のことを考えると、打撃・錬度の双方が高い刀剣が殿を務めるのが妥当

この場合は岩融がそれに該当する

だが、殿役は一番の危険を伴い最悪折れる可能性もあった


「わかった。・・・全員聞け!これよりこの部隊は死地に入る!全員折れずに帰還するぞ!」


長谷部の号令にそれぞれが本体を手に力強く頷いたのだった
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