君の名前にアンダーライン
□07.5
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07.5
「これを全部運べばいいんですね」
「…」
山積みの紐でまとめられた新聞紙を前に中在家先輩に仕事を頼まれた。
これをゴミ捨て場まで運べばいいらしい。
「私1人でやりますよ。先輩は七松先輩と一緒に居てください」
「…!」
「大丈夫ですよ。1人でやれます」
「長次ー!」
「…また本を本棚に入れ直すことのがご勘弁です」
両手をあげて参りましたと動作をとれば、中在家先輩は納得してくれたようで私に3束重ねた新聞を持たせてくれた。
ちなみについさっき数学の本棚を倒したのは七松先輩が走り回った結果である。
私は笑って「いけいけどんどんで、行ってきますね」と言った。
「…落ち着いて」
いつもよりはっきりした声で中在家先輩が喋った。
珍しすぎることに目を見開いてそれから瞬きをぱちぱち。
「落ち着いて行ってきます」
図書室をでると、もう放課後なだけあって廊下は静まりかえっている。
外からの野球部の声が聞こえてくるほどだからよっぽどだ。
階段をおりて外にあるゴミ捨て場につくと奇声が聞こえてきた。
なにかあったの!?とキョロキョロするとそれはどうやら武道場から聞こえてきたらしかった。
すぐに私は答えにたどりついた。
!、剣道部だ。
めーんとかどーうみたいなやつか。
なんか相手に向かうときに奇声だすよね。
剣道について詳しくないからどういう意味があるのか知らないけど。
紙ゴミをいれる倉庫に新聞をいれ、また図書室に戻る。
今日は部活行かずに全部片づけるかなあ。
図書室に戻ると、七松先輩がまた図書室内を走り回っていた。
てかお前剣道部だろ、部活いけよ。
中在家先輩は委員会なんだから仕方ないけどお前はいけよ。
そう心の中で毒を吐く。
さて次は5コくらい持って行こう。
う、さすがに前が見づらいな。
無事ゴミ捨て場につきそう。
また奇声が聞こえてきて武道場を見ると鉢屋とかかれた道着をきた人が誰かと打ち合っていた。
剣道の良し悪しはわからないが綺麗なフォームだと思う。
そちらに目を奪われていると、何かに蹴躓いた。
あ、やばい。
「あ゛ー、もういや!」
新聞をぶちまけ、私は四つん這いになり膝を擦りむいたらしく膝が痛い。
調子乗った私が馬鹿でした。
「大丈夫?立てる?」
「え、あ、ありがとうございます」
袴を履いた男の人が手を出してきた。
四つん這いの私にはもちろん顔は見えない。
とりあえず差し出された手を借りて立ち上がる。
柔らかい手だった。
「あれ、武田さん…?」
なぜ私の名前をと思って顔を見たら図書委員の先輩だった。
「図書委員の…!」
「不破雷蔵です」
すみません。
名前覚えてなくてすみません。
かっこいいなとは思ってました。
「うわ、すみません。汚い手で」
彼の手を見ると黒いコンクリートの破片がついていた。
間違いなく私の手についていたものだ。
「いや、いいよ。それより膝大丈夫かな」
「膝は大丈夫です、ありがとうございます」
ペコペコしていたら彼は保健室行った方がいいよという助言をのこして武道場に戻っていった。
彼の手と触れたところが熱い。きっと気のせいだ。
新聞を拾い、倉庫にぶち込んだ。
図書室に戻ると七松先輩と中在家先輩は帰る準備をしていた。
「早く行くぞー!」
「私保健室に行くので先行ってください」
速く歩くと痛いので先に行ってくれた方が都合がいい。
中在家先輩はついてきてくれようとしたがそれは断って先に図書室を出て行く二人を見送った。
私はゆっくり荷物をまとめ、図書室の鍵を閉め保健室にむかう。
保健室にいくと不運で有名な善法寺先輩がいらっしゃってなぜか何もないところで一緒に転んだ。
消毒をしてもらっている間、保健室から外を見ていると不破先輩が見えた。
また手が熱くなる。
中学3年生の日のこと。
この日が始まりだった。
私は鉢屋先輩の手が触れたときにこの日のことを思い出したのだった。
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色々ありますよね。
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