君の名前にアンダーライン

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「で、雷蔵は気が緩みすぎだと思う!」
「なるほど。部活で打ち合っていてもその気の緩みがわかるほどなんですね」
「そう!わかるかなあ、腰が入ってないっていうか雷蔵らしくないんだよ」
「常勝と有名な大川学園剣道部の名が泣きますね」
「それで誰が迷惑するかってオレらなわけじゃん」



オレが愚痴をこぼす中、武田ちゃんは淡々とそれに返事をし三郎は何故か居づらそうにしている。
なんかいつもの三郎じゃない。
変なの。


「ねー、三郎」
「…ん?あぁ」
「眠いなら寝たら?」
「どこで」
「ここで」
「阿呆」
「だって不機嫌だから寝たほうがいいかなって」


真顔で返すと無意識だろうが眉間にしわがよった。
確かにここでは寝られない。
だってここは公道の真ん中。
さすがの鉢屋三郎だってそれは無理らしい。


「どうしたんだよ三郎。あ、わかった!生理?」


いたって普通のことをきいたつもりだった。
武田ちゃんは、は?という口の形をしていた。
口に出かけて急いでのどの奥にしまったみたいだ。
それと同時に息を変なふうに吸い込んだらしく咳き込んでしまっている。


「そんなに俺変なこと言ったかなあ」

彼女の背中をさすりながら自分の言ったことを振り返る。
三郎が変なのは本当だから変なことは言ってないと思うんだけど。

「男の私に生理がくるわけないだろうが」
「あ、そこ?冗談だよー」
「尾浜先輩どこをさして変なことだと思ってたんですか...」

(全く意味が分からん)


武田ちゃんの顔がそう言っていた。
また口には出さなかったのはきっと俺等が先輩だからと気を遣ってのことだろう。
こういうところしっかりしてるよね、この子。


「それにしても三郎本当に病気じゃないの?」
「病気?」
「早く病院いきなよ」
「気が向けば、な」


そっぽをむいて黄昏る三郎。
なんか妙に色気がある。
こういうところに女子は惚れるんだろうか。
そう思って武田ちゃんをみると彼女は興味なさげにどこからか取り出した高野豆腐をかじっていた。

「やっぱ三郎、生理だよ」
「馬鹿か」


パコンッ。
黄昏時の綺麗な家路に驚くほど小気味良い音が響き、あまり聞きなれない高い笑い声が微かに俺の耳に届いた。



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