君の名前にアンダーライン
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「美覇、悪いが私は泣きやませ方を知らん。だからもう少しだけ我慢してくれ」
私を肩に担ぎながら小平太先輩はちょっとだけ苦しそうに呟いた。
私も小さく返事をする。
気がつけばどこかの教室にいて誰かの声がした。
「…小平太、お前美覇に何をした」
「私は何もしていない。最近美覇が仲良くしているやつらだ」
小平太先輩は中在家先輩を捜していたわけではないらしい。
なぜって迷うことなくここに来て中在家先輩と喋っているから。
教室に入るとすぐに肩からおろされ、椅子に座らされた。
「…本当なのか美覇」
「尾浜先輩は何も悪くありません。」
私は能なしのロボットのごとくそう言い続けた。
結局誰も悪くなくて、しいていうなら私が我慢出来なかっただけなのである。
ただそれだけ、そう片づけて欲しい。
「…小平太、こう言っているが」
「私には尾浜が泣かせたように見えた。」
中在家先輩が私の近くに来てこう言った。
「…一番心配をしているのは実は小平太なんだ。きっと美覇が泣いているのを見て、いても立ってもいられなかったんだろう」
小平太先輩は余計なお世話だと切り捨てられるほどの関係でもなく少しむず痒く感じる。
嫌いじゃないのに不平不満をぶつけてしまいそうになる。
まだまだ子供な自分が情けない。
「ご心配ありがとうございます、小平太先輩。でもあの人たちは悪い人じゃないです。あまり関わりがないからわからないかもしれませんが、優しすぎるくらいです」
「私は彼らをいつのまにか慕うようになっていました。かばうこともあるでしょうが今回については私1人の問題です」
「小平太先輩は口を挟まないでください」
あれ、切り捨てられた。
ごめんなさい。
私には今誰も必要ない。
いるのはちょっとの時間、なのかな?
立ち上がって教室から駆け出した。
図書室に荷物を取りに行き私はすぐに家に帰った。
行動するのは明日からだ。
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小平太は親しい女性に好き嫌いを表現するのは得意だけどそれ以外の感情表現は不得手だといいなあと思います。
この中では彼は意外と勉強も出来る人な設定です。