君の名前にアンダーライン

□13?
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13?



皆さん、こんにちは。
1年1組1番綾部喜八郎です。
僕の隣で怒りを露わにしているのが同じクラスの平滝夜叉丸です。
僕たちはクラスメイトの半分くらいが小学校からずっと同じクラスです。


だから気兼ねなく話せるというよりすでに家族のような空気です。
小さな異変にもすぐ気付きます。
今日は朝から美覇の様子がおかしいと話題になり、滝夜叉丸が本人にわけをききました。


こういうときはしっかりしています。


すると七松先輩とちょっとしたいざこざがあり1つ上の先輩と関わるなと言われたそうな。
正直関わるなと私が言いたいのは七松先輩だ。
たった数年の付き合いで何がわかる。
今は美覇が自分で越えなければいけない山なのだ。
それがわからないとは。


昼休みに入ったため僕は教室を出ました。

「喜八郎、どこに行くんだ」

「七松先輩のとこ。滝夜叉丸は行きたくないでしょ」

「…。」


滝夜叉丸は教室の入口に突っ立って俯いたまま動こうとしません。
ならもういい。


僕は1人食堂に向かいました。
美覇にバレないように。
バレたら何を言われるかわかりません。



食堂につくと座ってお茶を飲む七松先輩がいらっしゃいました。
もちろん僕は真っ直ぐそこにむかいます。


「七松先輩、」


彼がこちらを見ました。
ひどくおびえた目で。
自分がしたことに後悔があるみたいです。
それならお節介など焼かなければいいのに。


僕は一通り言うと先程から感じていた視線の主を見て歩き出しました。
彼らにも少しだけ、お話を。


「不破先輩には近付かないよう言っといてください。では」



最後の一言はいらなかったかもしれません。
なんとなくまだ美覇も心の整理がついてないようなので言ってみました。
本人もそう言っていたから。


言い終わりまた僕は教室に戻ろうとふらっと食堂を出たところ同じ委員会の立花仙蔵先輩に出会いました。
そして何故か頭を撫でられました。


「僕何かいいことしましたか?」


「わかっているならいい」




やっぱり先輩には勝てないなあ。
決していいことと思って七松先輩に言いに来たんじゃない。



美覇が哀しむのと、滝夜叉丸をはじめとした皆が怒る姿を見るのが嫌ってだけ。
結局自分のためであり、人から見れば大分お節介だと思う。



教室に帰ったら滝夜叉丸があんなこと言わせてすまなかったと謝ってきて、美覇が誰に聞いたのか喜八郎にあんな想いさせてごめんねと言ってきた。


申し訳ないのはこっちだよ。
と、口に出す前に美覇が話し出した。



「でも、私やっぱり自分で後始末してくる。今のままだったら私ただのお人形さんだもの。七松先輩のとこいってくるね」

「その前に尾浜先輩のところにもいかなくちゃ」

「喜八郎、ありがとう」


僕の肩をとんとんとたたいて、彼女は教室をでた。
苦痛に歪んだ笑顔。
ああ、胸が痛むなあ。

悪いことだったかもしれない。ようやくそんな実感がわいてきた。


けど彼女を動かすきっかけになったのなら本望だ。





苦しい想いもあってこそだよ。
だから僕は穴を掘る。
シュリーマンのように何か見つけられるかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
何かでるまで掘り続けるのは正直苦行だ。


それだけ頑張って何かでるかは運次第。


僕は穴が掘れれば何もいらない。
だから彼女に運をわけてあげてほしい。


なんて、いつのまに僕はこんな傲慢になったのだろうか。




きっと幸せだからだ。
さて、穴掘りにでもいきますか。


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シュリーマンは穴掘り続けて遺跡とか発掘した人です。
有名な方ので世界史とかにちらっとでてくると思いますので詳しくはそちらで。



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