君の名前にアンダーライン

□16
1ページ/1ページ



16


「見ての通り拘束しているんですよ、立花仙蔵先輩」

「楽しそうだ、私もまぜてくれ」

「仙蔵コロス」

「相変わらず可愛くないな、美覇」


右を鉢屋先輩、左を竹谷先輩に挟まれ前では仙蔵に顎をつかまれ上を向かされる。
天使とか言った自分を呪いたい。
こいつはしんべヱくんと喜三太くんがいるとき以外はただの魔王様だったことを忘れていた。

「立花先輩、武田と知り合いなんですか」


私の後ろを歩いていた久々知先輩が挙手をして質問をする。
仙蔵はにやりと笑って口を開く。
…嫌な予感以外するものか。


「恋仲だ」

「わぁ…」


尾浜先輩の口からなんとも棒読みな驚きがきこえた。
竹谷先輩だけは真に受けて私を肘でつついてくる。
本当に馬鹿だこの人。


「恋仲は否定します」

「私と美覇は元恋仲だ。美覇が私に一目惚れしてな」

「小学生のころのことを掘り返すな!」

「お前は喜八郎に連れられて私のところに毎日来てた」

「そして玉砕。それから私に会うと口を開けば物騒なことばかり言うようになって…」

「黙れ、立花仙蔵!」

「事実を話しているまでだろう」


「…!」


図星だ。
完全なる図星の無言である。

先輩方が久々知先輩以外いじわるく笑いながら私を見る。
仙蔵はやりきったとばかりにいい笑顔をうかべる。

「おつかれ、美覇」

「は、はあ。」


竹谷先輩に泣き真似をしながら同情された。
殴りたい衝動は拳にためておく。
あとで滝夜叉丸にぶつけよう。
うん、それがいい。



「さてと、いくぞ」


何故か途中参加のはずの仙蔵が先頭を歩き、それに続く形で私を拘束する2人と私、その他2人の陣形が出来上がった。


もう、逃げられない…。


急募、立花仙蔵をぼっこぼこにするかお持ち帰りしてくれる人。


いないよなあ。



にこにこ笑う4人の先輩と高野豆腐を黙々と食べ続ける電波…あらため美青年にかこまれ嬉しくも落ち着かない場所に居てしかもこれから何をされるかわからない。


…あきらめよう。

仙蔵が現れた時点でもうどうにもできないのは決まったも同然なのだから。




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ