緋色の告白
□02
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02後悔を予測する賢さ
4年生になった。
チャーリーがクィディッチチームに入らないかと誘ってくれた。
だから選抜試験を受けてみたらビーターに選ばれた。
選ばれたときには思わず泣いてしまった。
それくらい実は嬉しかったんだなあと驚いた。自分でも予想外だった。
チャーリーはその報せを聞いた瞬間私を抱きしめた。
馴れないことに固まってしまった私とそれに気が付かないチャーリー。
グリフィンドールの談話室は笑いにつつまれた。
いつのまにか手のことなんか忘れて。
この日々が長続きすればいいとだけ考えて、少し欲張りかと苦笑する。
それから数日後クィディッチの練習が始まった。
私のビーターの相方は1つ上の北欧系の男の子だった。
皆がかっこいいと言う所謂イケメン。
ハンサムよりはイケメンというのに値する少しちゃらけた人。
「俺はイェレ・カルット。よろしくね、ナマエ」
「ええ、よろしく」
手を差し出されたのでそれを手袋をはずさないまま握った。
彼は嫌な顔をせず握り返してくれた。
優しい人。
彼は細身だし私は女だし、他のチームからは最弱ビーターなんて言われた時期もあったけど試合が始まれば誰も何も言わなくなった。
私たちは本当に仲も良く、息もぴったりだった。
「あの小鬼と仲良くしているなんてお前も落ちたな」
チャーリーと大広間に向かって歩いていたら聴こえてきた声。
声を辿るとそこにはニタニタと笑うスリザリン生2人とイェレの背中が見えた。
「色仕掛けでもされたか?」
下品に笑う2人。
私はチャーリーをそこに置いてそっちに歩き出した。
「俺のことはなんとでも言えばいいよ」
「駄目。イェレは悪くない。蔑むのは私だけでいいでしょう?」
「おっと、ハニーのご登場か」
彼とスリザリン生の間に立つ。
またニタニタ笑う2人。
ちらちらと私の手を見るのがわかる。
「彼と私はただの友達。私のことは何言ってもいいけど彼の評判まで下げないで。私に用事があるなら直接くればいいわ」
「この可愛いおててで相手してくれるんだ?」
手首を握られなめ?ように彼は私の手を眺めた。
人から見たら異様に長い爪。
彼らの瞳にはどう映るんだろう。
軽蔑、畏怖、奇異。
「君たち、減点されたくなければ散れ。今すぐに」
後ろから聞こえた声にびくりとしたまま体が硬直する。
監督生だ。
スリザリンの2人は私の手を放すとおもしろくなさそうに歩いていきイェレはごめんねといいながら去っていった。
「ナマエ、ごめん。俺がもっと早く止めれば良かった、言いたくないこと言わせたよな、ごめん」
チャーリーが駆け寄ってきて私の顔を胸に押し付けた。
私から彼の表情は見えないがきっと悲痛に歪んでいるんだろう。
チャーリーは人の気持ちに敏感だから。
私が彼を見上げると目からは雫がぽたりぽたりと流れていて、この歪な指で優しく拭ってみた。
「チャーリー、邪魔して悪いけど俺はもう行くよ」
「あ、ありがとう、ビル」
チャーリーが振り向いたほうには彼とよく似た赤毛の監督生が立っていた。
かっこいい。
それしか言葉が出てこない。
「あの、さっきは助けていただいてありがとうございました…えっと…」
「ウィリアム・ウィーズリー。ビルでいいよ」
「本当にありがとう、ビル」
私がお礼を言うと彼は笑っていえいえと言った。
それから思い出したかのようにこう言ってくれた。
「俺は好きだよ、その手。頭のいい小鬼の手だ」
こんなふうに言ってくれたのはビルが初めてだった。
だからその日からビルが好きになった。
もちろんそれは小鬼を理解してくれる者として。
それにチャーリーのお兄さんだもの嫌いなわけない。
それから私は密かにビルに憧れを抱くようになった。