緋色の告白
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04君を盗み見る
図書室は今日も静かだ。
外は真っ白な雪景色で少しうるさいけど、図書室内はやはり真面目な面々がそろっているだけあって羽ペンが紙の上をなめらかに滑る音だけが終始奏でられる。
一方私は完全に演奏を止めてしまっていた。
どうにも魔法薬学のレポートがまとまらない。
苦手な訳ではないけれど文章にしろと言われるとよくわからなくなる。
教科書から引用してもなんだか微妙な出来。
書いては眺めそして消す。
三分の一から先に進めない。
提出日は明日だ。
しかも魔法薬学はかのスリザリン贔屓で有名なスネイプ教授。
忘れたなんて言ったら…減点は確実だ。
「ミスミョウジ、レポートを忘れただと…グリフィンドール10点減点」
そんなことを言っているスネイプ先生を想像するのは容易だ。
この前もチャーリーがそう言われていた。
はあ、どうしたものか。
やる気も根気もつき、突っ伏していると誰かが机をコンコンと小突いた音がした。
顔を上げるとビルが笑顔で立っていた。
「隣、いいかい」
「もちろん」
とりあえず教科書や資料の山をビルが座るのとは反対に移動させた。
それにしても今日も今日とてビルはかっこいい。
「チャーリーはどうしたの」
「今日は男の子たちと外で遊んでいるの。初雪だからね」
「ああ、なるほどね」
そこで会話は途切れ、彼は羊皮紙をひろげ始めた。
手に持っているのは魔法史の教科書。
私は授業の魔法史は嫌いだけど個人的に調べるのは大好きだ。
だから少し盗み見ながらこの時代かあと1人ニヤニヤする。
我ながら気持ち悪い。
一応彼がいる手前真面目な私を演出したくて途中かけの羊皮紙を彼に倣ってひろげる。
ただしまったく進まない。
「…ナマエ、そこの書き出しはね」
急に声をかけられ思わず肩が大きくはねる。
小さく謝られ私が1人わたわたしていたけれどすぐに解説が始まったためメモする。
なるほどと感心してしまうほどわかりやすかった。
私が何時間もかかったレポートを10分もしないうちに書き終えてしまうくらいには素敵な解説だった。
ビルはその間にきちんと自分のレポートもやり終え、大広間に一緒に行こうと誘ってくれた。
時計を見れば確かにもう夕食の時間にほど近い。
私はもちろん縦に首をふり図書室を出た。
大広間についた途端チャーリーが私の顔面に雪玉をクリティカルヒットさせてきた。
爆笑していたのも束の間チャーリーは横にいたビルを見るとすぐに土下座した。
さすがはお兄様だなあとその様子を見ていたら手が伸びてきて顔をタオルで優しく拭かれた。
「うちの弟がごめん。下の弟たちと遊ぶ感覚でやってしまったんだと思う、許してやって」
私は弟と同類かと少し泣きそうだった。
てん