緋色の告白
□04
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04間違ってるかもしれないけど
「イェレ、ちょっと待ちなさいよ」
「嫌だ。なんで君のために」
「っ、もうイェレなんて知らない」
「いいさ、むしろほかっといてくれ」
クィディッチ競技場は荒れに荒れていた。
原因は私とイェレ。
5年生になり私もイェレもまたビーターを任された。
最初こそ円滑に練習は進んでいた。
だが、数ヶ月たったころからお互いにテストやなんかで苛立ち始めすれ違い、ついに爆発してしまったのだ。
きっかけはとても些細なことで覚えてすらいない。
私とイェレは口喧嘩になりそれをキャプテンになったチャーリーが止めた。
「2人ともやめてくれ。新しく入ってきた子たちが恐がってるのわからないか?お前たちにここにいる資格はない。出ていけ」
私たちはそれに口々に反論するが、
「これはキャプテンとしての俺からの罰だ。1年間クィディッチ禁止とする」
チャーリーに背中を押され競技場を追い出された。
出る直前にチャーリーは早く戻ってこいと言った。
つまり早く仲直りしろと。
無理。
私もイェレも無言で談話室までむかい、すぐに寮に入った。
仲直りなんて出来るだろうか。
ちょっぴり不安。
謝るのは苦手だ。
元々人と関わること自体が不得手だからなあ。
この手のおかげで。
次の日、朝早く目が覚めてしまい1人大広間へと歩く。
中に入るとやはり人は少なくグリフィンドールにも片手で数えられるほどしかいなかった。
「おはよう、パース」
「…おはよう、ナマエ」
パースは本から少し目線を上げて挨拶を返してくれた。
相変わらずパースは可愛い。
チャーリーに似た髪色はビルよりも少しくすんでいる。
でもさわり心地は1番だろう。
他2人は触ったこと無いけど。
今日も頭をぽふぽふ撫でていたら通りかかったチャーリーに笑われた。
「パースはナマエの良いおもちゃだな。ところでイェレとはどうなった」
ぽふぽふと上下運動をしていた私の手が止まる。
チャーリーはできる子だからそれだけで察してくれたようだ。
「お前らなあ…ビーターは特に仲違いされると困るんだよ」
「わかってる。イェレは良い人だし良き理解者」
「私に悪口の1つも言ったことない」
「仲直りの仕方はわかるんだよ、謝れないだけで」
だんだん俯く私にチャーリーは無言で頭を撫でる。
そういえばこの人もパースやその下の子たちのお兄ちゃんだった。
なんて急に思い出してしまうほど優しい撫で方。
「仲直りって難しいんだよなあ。俺だって小さい頃はたくさんビルと喧嘩した」
「歳が近いし、パースが生まれるまで2人だったから衝突することなんて日常茶飯事だったよ」
「謝るのはいつもお兄ちゃんだからってビルだったけど大抵俺が悪かった」
「まあたまに逆もあったけど」
「結局些細な喧嘩はどっちも悪いんだよ」
頷けばパースが複雑そうな表情をしているのが髪の間から見えた。
そうだよね、憧れの仲良しお兄さん組がまさか幼い頃は喧嘩ばかりだったなんて。
今じゃ信じられないほど仲良しだもんなあ。
「確かにそうだね、私イェレに謝ってくる」
立ち上がり両手を前にガッツポーズして気合いをいれる。
パースはそんな私を見てため息をついた。
チャーリーはにこにこ笑う。
「お、噂をすればなんとやらだ」
チャーリーの視線を辿ると大広間の入口付近にイェレが歩いていた。
私は彼に駆け寄った。
「あ、ナマエ!この間はごめん。頭に血がのぼってたみたい」
「私こそごめんなさい。八つ当たりみたいなこと言って」
仲直りのしるしといって握手をかわす。
彼は私の手を優しく握る。
いつのまにか抵抗もなく手を前に出せるようになっていたことに驚いて1度引っ込めてしまった。
「…そんなに俺のこと嫌い?」
「ち、違う!普通に手を出せたことに自分で驚いちゃって」
イェレが笑い始めた。
これはしばらく止められない。笑い上戸なのだ。
彼に彼女が出来ても長続きしないのはこれのせいもあると思う。
彼が笑い終えるのを真顔で待っていたら朝食を食べ終えたらしいチャーリーが横を通って私にウィンクしてきた。
…ちょっとときめいてしまった自分が悔しい。
さすがはウィーズリー家の次男。
長男と血がつながっていることをこんなところで思い知らされるとは。
さすがに入口付近に人が多くなってきたため笑い続けるイェレを引きずって席に着かせる。
それでもなお笑い続ける彼の頭を近くにあった日刊予言者新聞で殴った。
それでも止まらないため私は1人朝食を食べ始める。
皆からいつもとは違う奇異の目で見られたのは言うまでもない。
3人以上の兄弟、特に上2人が歳が近くて下が少し離れているとたぶん下が生まれるまで喧嘩ばっかりだと思います。
下が生まれるとその子がいるときは喧嘩をしませんがお互い大人に近付いてそれぞれの理想がありそれでぶつかることはあるんじゃないかなあと。
きっとビルとチャーリーはそういう関係だと信じています。