緋色の告白
□07
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07未完成の夏
夏が来た。
もうすぐ7年生は卒業だ。
つまりビルは卒業してしまう。
チャーリーはあれから何があったのか知らないが晴れやかな顔をしている。
ビルが何か良いことを言ってくれたのかもしれない。
さすがはお兄ちゃんである。
そういえば彼はグリンゴッツのエジプト支店で働くそうだ。
チャーリー曰わく母親が少し寂しがっていたとか。
生憎私はウィーズリー家の御両親にはお会いしたことがないのだがきっと子ども達想いな素敵な人たちなんだろう。
3人の話をきいたり彼ら自身を見ていてもわかる。
「ナマエ、ビルが呼んでるわよ」
「え、ビル?チャーリーじゃなくて?」
「どうしたらあの2人を見間違えるの」
「…そうだね」
クィディッチを通して仲良くなった同室の彼女は呆れたように部屋を出て行った。
確かに彼らは兄弟とはいえ外見はあまり似ていない。
ビルは長身で細身、髪も長い。
チャーリーは男の子にしてはあまり背は高くなくてがっしりしている、一目でスポーツマンだとわかるし髪も邪魔くさいと言ってすぐに切ってしまう。
世話焼きなのは同じなのにね。
あとビルは燃えるような赤毛でチャーリーは少しくすんでいる。
私はどちらも好き。
自分にはない色だから。
てこんなことをしている場合ではなかった。
ビルに呼び出されたのだから早く行かなくては。
きっと朝食を一緒にってだけでしょうからそれなら早くすませたい。
お腹がペコペコだ。
そういえば父からきた手紙にも返事を出さなければいけない。
あとで梟を借りに行かなくちゃ。
私のペットは猫だから手紙は届けられないもの。
寮を出ると制服に身を包んだビルが私を待っていた。
「おはよう、ナマエ。よく眠れたかい」
「ええ、あなたは?」
「うーん…そこそこ」
困ったように笑うビルの顔にははっきりと寝不足ですと書いてあった。
隈がひどい。
せっかくの整った顔が台無しね。
「早くご飯食べに行きましょう。おなかすいちゃって、今にも鳴りそう」
「そうだね」
私たちは最近の授業について話をしながら大広間へ向かった。
彼とは以前図書室で会ってから何度か勉強会をしただけで今まで話した内容は8割勉強、2割チャーリーと言っても過言ではない。
普段も挨拶するくらいであまり話さない。
ビルの周りにはいつも誰か居て、図書室で一緒に勉強するときは私なんかが彼を独占していいものかと悩んだりもする。
「ビル、グリンゴッツで働くそうね」
不意に思い出して話をふる。
ビルは少し驚いた表情を見せてすぐ笑顔になった。
「ああ、うん。エジプトだけどね」
「エジプトってスフィンクスやピラミッドがあるところでしょう。私は行ったことないけれど父は昔勤めたことがあっていいところって言ってたの」
いつもと変わらない笑顔で私の話を聞き終わるとすっと真剣な顔になる。
きっと女の子はこういうところに惹かれるんだと思う。
「ナマエは将来グリンゴッツで働くのかい」
「たぶん。私が輝けるのはあそこしかないから」
「そっか。楽しみにしてるよ、未来の部下さん」
楽しそうに笑うビルに見惚れてしまった。
数秒立ち止まった私をビルは不思議そうに眺める。
そして優しく私の頭を撫でた。
自分の顔が驚くほど熱い。
「…可愛いなあ、ナマエは。チャーリーには勿体無い」
「だからチャーリーとは!」
「何でもないただの友達、なんだよね。知ってるよ」
いじわるい顔をするビルはやっぱりかっこいい。
私もそうとうキテいる。
主に頭が。
ビルに嫌みの1つでもいえたら良かったがそれより前にビルが言葉を紡いだ。
「さあ、お待ちかねの朝食だ!」
あ