緋色の告白

□09
1ページ/1ページ



09裾を掴む子供のように


卒業式が終わり今は告白合戦の真っ最中。
さっきまで一緒にほっつき歩いていたイェレもチャーリーも泣き腫らした眼のお姉様方に連れていかれてしまった。
もちろん私みたいな怪物はお呼びだしされませんの。


「あ、独り身仲間発見!」

「…トンクス」

「あたしら特殊だから仕方ないって!」


トンクスは後方から近寄ってきて今は私の背中をバシバシ叩いている。
痛い。


「トンクスは好きな人いないの」

「うーん…いない!」


さっきまで落ち着いた茶色だった髪がピンク色に変わる。
七変化は本当に見ているだけで楽しい。
きっとトンクスが好きになる人ってとっても優しくてユーモアのある人なんだろうな。
あと悪のりに乗っかってくれる人。


「ナマエ!さがしたよ」

「ビル!?告白合戦終わったの?」

「へ?あー、うん」

「お疲れさま。あと卒業おめでとう」


今日は1日ビルには近寄れないとふんでいたがそんなことはなかったようだ。
私はポケットの中を探り、あるものを取り出した。


「卒業祝い!百味ビーンズとビルにはこの置物。ちょっとは涼しげな気分になれるかなと思って」


静かな海が小さな水晶玉の中に広がって見えるものだ。
水晶玉は買ってきたけれど海は私のお手製である。
この前読んだ本の雑貨のページにあったからこれは丁度いいと使わせてもらった。


「ありがとう。それにしても百味ビーンズ好きなのかい。チャーリーのクリスマスプレゼントにいつも必ず入っているけど」

「割と好き。私より父のが好きで毎月沢山おくられてくるの、単なるおすそ分けよ、ごめんね」


ちなみにほうれん草味は割といける。
じゃなくて…。


「こちらニンファドーラ・トンクス。ハッフルパフの5年生」

私の後ろに隠れて睨むようにビルを見ていた彼女を紹介する。
さすがのビルも苦笑いだ。


「ウィリアム・ウィーズリー、グリフィンドールの7年生。よろしくトンクス」


トンクスは私の後ろから動こうとせずその場で握手を交わした。
いつもはもっとフレンドリーで人当たりもいいのにどうしたんだろう。


「…ナマエに手だしたら許さないから!」


行こう、と言ってトンクスは私の手を引いてビルとは反対方向に歩き出す。
私は髪を赤くするトンクスに焦りながらビルにジェスチャーだけで謝罪した。
彼は苦笑いを深め私に手を振った。


「トンクス、ビルは私のこと良くて妹くらいにしか思ってないよ」

「…なんか気にくわないの!それにこの忙しい時間にわざわざ会いに来る!?」

「それは、確かに思ったけど」

「でしょう!絶対狙われてる。チャーリーにしといた方がいい」

「ないない。チャーリーにもビルにも失礼よ」


トンクスの言うことはよくわかる。
ビルへの告白がこのまだ卒業式終わって序盤にないわけないのだ。
もしかしたらチャーリーに会いたかったのかもしれない。
それならありえる。
残念ながら彼も忙しくて会えないだろうが。


急にトンクスの足が止まり私はもちろん彼女にぶつかり尻餅をついた。
どうしたのかと彼女の視線を辿ると熱烈なキスを交わす男女。
詳しく言うならばチャーリーとハッフルパフの7年生がいた。

確かあの7年生の人はトンクスと仲が良かったような。
じーっと見てしまっていた私は不意にチャーリーと目があった。
やばい。


「トンクス、行くよ!ねえ、ちょっと、トンクス!」


肩を揺すっても動かないトンクス。
まるで石化魔法でもかけられたかのようだ。
こうなったら奥の手を使うしかない。

「ニンファドーラ!行くよ!」


その名をきいただけでトンクスがこちらをむいた。
状況がようやく理解出来たのか私が手招きすると走り出す。


「あーもう。いい先輩だと思ってたのに残念」

「えー、なんで?彼氏彼女の関係だから問題ないでしょう」

「彼氏彼女の関係!?貴女本気で言ってるの」


トンクスが私に驚愕の表情を見せる。
私がそれに肩をすくめると彼女は呆れたように息を吐いた。


「チャーリーが誰かと付き合っていたように見えた?」

「いいえ、全然。」

「しかもあの人前に1度ふられてるの、つ!ま!り!」

「つまり?」


「最後だからってキスをせがんだのよ。それも強引に、無理矢理」

「…ひどい話ね」


チャーリーはきっと断ったんだろうな。
素直な子だから。
好きでもないのに無理です、って。
でも、無理矢理なんて訴えられても仕方ない。
セクハラと同じじゃないの。
気持ちが通じてない一方的な想いで相手とそういう行為をしたいと思うのは自由だけど強制するなんて頭がどうかしちゃってる。


恋した人って怖い。



ビルとそんなことしたいなんて1度も思ったことない。
やっぱり恋なんかじゃないんだ。


「どうして諦められなかったのかなあ…」



本当に私もそう思う。


その後キスマークを顔中につけたイェレがにへらとして近寄ってきたから2人で一緒に殴っておいた。


チャーリーが女の人怖いと言って私に抱きついてきたのは私だけの秘密。




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ