緋色の告白

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10言い訳じみた話

ホグワーツ特急はまだガラガラ。
私は荷物だけ積み込み場所取りをする。
イェレもチャーリーもまだ来ていないから帰りは違うコンパートメントになるかもしれない。
まあいいや。
読書でもしながら帰ろう。
とりあえず一旦下りようと歩いていると監督生用のコンパートメントに見慣れた赤毛が見えた。
乗っちゃいけないだけで入ってはいけないというルールはない。
私は扉を開けて話しかける。


「ホグワーツを堪能してこなくていいの?もう最後なのに」

「いいんだ。もう充分だよ」

「私は絶対寮のベッドが懐かしくなっちゃうなあ。あれでずっと寝ていたい」

「ナマエらしいよ」


ビルは窓から外を眺めている。
様になるのはビルだからこそだ。
綺麗。マグルのカメラで撮りたくなる一瞬の美しさだなと思う。


「じゃあ私は外行ってくるね」

「待って」


外に出ようと方向転換する前に腕をつかまれた。


「この前のお礼。蛙チョコと髪留め」


可愛らしくラッピングされた袋が手渡される。
早速あけてみると私好みの髪留めが出てきた。

「一応店員さんにきいて流行りとか聞いてみたんだけど、最終的に自分の好みになっちゃって…気に入らなかったらごめん」

「そんなことないよ。ありがとう」


ビルが笑ってくれたから私は手を振って外に出る。
これは彼もモテるわけである。
プレゼントくれた子には皆こんな可愛いの返してるのかな。
お金、大丈夫かしら。
あまり経済状況はよくないとチャーリーが言っていた。
まあビルのことだから何か対策をとってるはず。
心配しなくてもいいか。


外に出てあらためてホグワーツを眺める。


「もう、いないんだなあ」


学校にあった彼らの居場所も物もその人も。
次はイェレが7年生。
私がクィディッチに参加できるのはたぶん最後。
彼以外のパートナーなんて考えられないもの。



寂しいなあ。



今の7年生もこんな気分なのだったらかなり辛いだろう。
鼻の奥がつんとする。
6年生の1年は大切に過ごそう。


「ナマエ!どこ行ってたんだよ、探した」

「早めに来てただけ。場所取りしといたの。行きましょ」


走ってきたチャーリーの腕を引いて私が荷物を置いたコンパートメントを目指す。


「そのプレゼント誰から?」


チャーリーがにやりとしながら聞いてきた。
一応素直に答えておく。


「貴方の素敵なお兄様から。とても綺麗な髪飾りと蛙チョコ」

「へぇー…」


まだ同じ表情で見てくるチャーリーに目でなにかと訴えると目をそらされた。
コンパートメントについてから彼は口を開いた。


「一回しか言わないぞ、いいかよく聞くんだ」

「なあに。なんの話?」

「ビルは気のないやつにプレゼントなんかしない!」

「ただのお返しよ。皆にしているはずだわ」


私が白い目でチャーリーを見るとつまんないなあと彼は口をとがらせた。
いやいやつまらないとかいう話じゃない。
チャーリーは何を期待しているのか、よくわからない。


「ビルのこと私はなんとも想っていないし、クィディッチやイェレやチャーリーのが大事なの」

「つまり少なくとも私は彼に恋していない。だから気があったとしても私は受け入れられない」


言い切るとチャーリーは眉間にしわをよせる。


「恋人以上に好きなことがあっちゃいけないのか?好きと愛してるは意味が違う」

「相手の気持ちに中途半端に応えて、はいさよならじゃ失礼だろ」


ビルと同じ、と思っている私に腹が立つ。
でも今のチャーリーの顔は真剣な顔をしたビルにそっくりなのだ。


「チャーリー、ビルがどう想っているかはわからない。でも恩を徒で返すのは確かに違うわね」

「うん」


また私は中途半端な態度をとってしまっている。
理由はビルが私に気があるかもしれないというのに疑問があるから。

チャーリーの勝手な思い込みだと言いたかったが、どうやら私のせいで虫の居所が悪いようだ。
今は黙っておこう。





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