緋色の告白

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13一生の宝物にします


イェレが卒業式を終え、私のところに来てプレゼントをくれた。
すぐに開けてと言われたからその通りにする。


「まあ!新しいグローブに呪文集…後ろの方は真っ白、あっ、書き込めるんだ!もしかしてあのとき私が書き留めてたの見てた?」

「うん。図書室でよく分厚いやつ抱えて羊皮紙にメモしてただろ?しかもすぐになくしてた」

「…そうなの。そそっかしくて」


私は頭をかくことしか出来ない。
まさかそこまで知られていたなんて私も駄目な魔女だ。
呪文集は素直に喜べるけど…グローブは笑えない。


「グローブは君がまだ続けることを願ってるからさ。ナマエはビーターじゃなくても活躍できる」

「チャーリーも言ってたよ。俺が他と組んでたらきっとチェイサーとして大活躍してただろうって」


イェレは笑ってるけど、私は少し貶された気分だ。
私は好きで貴方と組んでいたのに、そんなこと言われると寂しくなる。


「私はビーターが好き。不向きだって言われても貴方と組んだらそんなことなくなるもの」

「そんなムキにならなくてもわかっているよ。でも俺に縛られちゃ駄目だ。自分だけで出来ることを探すのも悪くない」

「才能を無駄にしないで欲しい。パートナーとしての最後のお願い」


ね?と同意を求める彼に納得はいかなったけど頷いた。
イェレは満足げに私の頭を撫でる。
ぶすけた私は頬をふくらませたままポケットからプレゼントを彼の目の前にだす。
我ながら可愛げがない。


「ありがとう。ちなみに中身はなんだい」

「…箒のお手入れセットとマグル製の飴の詰め合わせ。前に私が食べてたとき物欲しげに見ていたから」

「いや、おいしそうだったから…つい」


照れたように頭をかくイェレはもう卒業なんて信じられないくらい子供っぽかった。
これが立派な闇祓いになるんだから世の中どうかしている。
彼はすでに飴の袋を開け、どうやらライチ味なんていう珍しい味を選んだようだった。


私は好きだけどね。


「イェレ!ナマエ!クィディッチのチームメイトで写真撮るって!」

「オリバー、教えてくれてありがとう。行こう、イェレ」

「うん」


オリバーがこっちだよと小さな手で手招きをする。
見えてきたのはチャーリーを始めとするグリフィンドールのクィディッチ選手たち。
次に誰が残れるかわからないけど、私も一応オーディションは受けてみようかな。
だってまだ、やっぱりクィディッチしたいもの。



「イェレに何か言われたか?」

私が百面相していたからかチャーリーが問う。


「クィディッチ続けなさいって言われた」

「そりゃごもっともなご意見だ」

チャーリーは私の頭を小突くと何事もなかったかのようにカメラにむかって笑顔をつくる。
私も慌ててカメラに視線をむけた。

バシッと眩しすぎるフラッシュに頭がくらくらする。
カメラを持っていたリー・ジョーダンにブーイングの嵐がおきた。
リーは謝り、もう1度撮ることになった。



後日貰ったその写真は皆本当に楽しそうに写っていた。


ああ、私の手は選手枠を掴み取れるかしら。



ホグワーツを去るとき考えたのは卒業する7年生のことではなく無粋にも自分自身の、しかも諦めかけたクィディッチのことだった。


去年とは大違いだと1人笑う。



列車に荷物を置いて窓から外のホグワーツ城をみる。
去年も外からだけどこうして眺めたっけ。
当たり前だけど変わらない。
変わったのは私の目線とビルがいなくて双子がいること。


ビルは元気にしているだろうか。
なんてまたウィーズリー家の長男のことを考えている私に呆れてしまう。

今はホグワーツとのしばしの別れ、寂しさを考えるとき。



ふうと一息吐いてそれを考える。


しばらくあのベッドで寝られないのが残念だ。
…変わらない自分の意見に懐かしいビルの横顔が浮かんだ。





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