緋色の告白
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15この温度差をどう埋めようか
「チャンス無駄にしてどうすんだ、よ!」
「ごめんなさい」
庭小人を捕まえては投げるチャーリー。
気持ちいいくらい遠くに飛んでいく。
私が歩いてきた音が聞こえた瞬間振り返ってニカっと音がきこえそうなほどの笑顔を見せてすぐに真顔になった。
事情を話すと大きなため息をつかれた。
ただし庭小人を投げる手はとめない。
「…余裕ねえなあ」
「はい、余裕ありません…」
「本当だよ」
彼は私を見ずに答える。
見捨てられるかも。
いつもよりトーンが低いもの。
「ちょっと俺中行ってくるから、フレッドとジョージ頼んだ」
私の返事も聞かずチャーリーは家の中へと入っていった。
仕方がないので双子を監視する。
わいわい騒ぎながらも華麗に庭小人たちを投げる2人に感心しながら謝り方を考えてみた。
さっきはごめんなさい。
あんなキツい言い方しなくても良かったって反省してる。
そうね、無難にいきましょう。
「あ、パースが見える!こいつ投げてやろ」
「おい、やめろって」
私が目を離しているうちにさっきまで前方にいた双子は後方右、パースの部屋が見える位置に移動していた。
丁度窓からパースが読書しているのが見える。
窓は運悪く庭小人1人分入れるくらい開いている。
まずい、と思ったときには遅すぎた。
「っ、フレッド!」
窓を全開にして怒声をはなつパース。
頭には庭小人がへばりついている。
パース、ごめんね。
あれは笑っちゃうよ。
なんとか笑いをこらえる。
ジョージが爆笑しているフレッドの横で呆れていた。
やっぱり真面目。
「パーシー、ごめん。庭小人こっちに投げてくれないか」
パースはまだ怒っていたけれどジョージのいうことにはきちんと従い庭小人を下に投げた。
日頃の行いがものをいうっていうのは本当ね。
改めて学ばせてもらいました。
「ナマエ、面白かっただろ?」
パースが思いっきり窓を閉めた後フレッドがこちらに駆けてきた。
ジョージは不機嫌そうに片割れを見ている。
彼は私のところへ駆け出しはしなかった。
「パースに謝らなきゃだめよ、ジョージだって怒ってるわ」
「相棒が怒ってるのなんてしょっちゅうさ。気にしなくていいよ」
どうしよう。
このままじゃ2人、仲違いしたまま。
それはよくない。
喧嘩の仲直りの仕方はイェレとのときに学んだ。
謝らなきゃ終わらない。
「フレッド、謝りなさい」
私が厳しく言葉を発するとフレッドの肩がびくりとした。
たまには私だってびしっと言うんだから。
「あのね、フレッド」
私がさらに叱ろうとしたらいつのまにかこちらに来たジョージに止められた。
そして彼は真っ直ぐに私を見てこう言ったのだ。
「ナマエ、僕悪いと思っていない謝罪はいらない。フレッドが反省するまで口利かないからいいよ、ほかっておいて」
「フレッド、パーシーには謝れよ」
怒るわけでもなく嫌悪を顔に出すわけでもなく涼しい顔をしてジョージは家の中へと入っていった。
フレッドは「まったく誰に似たんだか」と肩をすくめる。
フレッドが何か私に言って中へ入っていった。
だが私の耳には何も入ってこない。
私は自分が思っていた以上に子供だったことに気がつかされた。
私よりジョージのが何倍も大人に物事をみてる。
そこは何年も人と関係を持たなかった私と彼の違い。
嫌でも関わらなければならない人が常に1人はいるのだ。
それに加えて兄妹たちもたくさんいる。
本当、ウィーズリー家は私に色々なことを教えてくれる。
私は小さく感謝の意をつぶやいてから、足元にいた庭小人を遠くに投げる。
庭小人はチャーリーや双子たちのように綺麗には飛ばずその半分くらいの距離にぼすっと音を立てて落ちた。
私はそれを窓から見ていた者がいたことに気がつかなかった。