緋色の告白
□16
1ページ/1ページ
16深夜2時の訪問者
「…!まだ起きてたのかい」
「アーサーさん、ごめんなさい。ジニーはきちんと寝ています、私寝つきが悪くて」
「それならこんな暗いところで読書をせずに下で語り明かそうじゃないか」
あれから結局ビルに謝ることは出来ず1日を終えてしまった。
ちなみにあのあと家の中に入り暇だったからパースに本を借りに行くとなぜか爆笑された。
こらえているらしかったがまったく堪えられていない。
なんだったんだろう。
そして夜になりベッドに入る。
ジニーの部屋を借りて寝ることになったのだがジニーは双子がしていたお化けの話が頭から放れないらしく眠れないと私に訴えた。
だから彼女のベッドに腰をかけて頭をなでたり肩をぽんぽんと叩いたりしていたらジニーは眠ってくれた。
代わりに私は目がさえてしまい昼にパースに借りた本を開く。
そして冒頭に戻る。
アーサーさんは手招きをした。
私はもちろんそれに従って部屋の外に出る。
階段を下りていくとリビングにはビルとチャーリーがいた。
「ジニーの歯ぎしりで眠れなかったか?」
「チャーリー、違うわ。目がさえちゃって…」
「慣れない環境だからだよ、きっと」
ソファに座る2人。
2人が場所をあけてくれたからもちろん座る。
アーサーさんはコップに水をくみ飲み終わると笑顔で手を振って寝に行ってしまった。
なんだ、寝るのか。
あ、そういえばビル普通に話しかけてくれた。
「ナマエ、昼はごめん。手、痛かったかな」
「!、大丈夫よ。少しびっくりしただけ」
「なら良かった」
あえて物理的なことを話題にするのね。
話の内容についての謝罪は?
何故あんなに私に問い詰めたの。
あの表情はなに。
あんなに聞かれてあんな顔されたら…誰だって勘違いするわ。
でもきっとあれ、私のことを心配してくれているだけ。
妹分の好きな奴を見極めてやろうってところかしら。
「ビルは好きな人いないの?チャーリーは?」
それなら私だって調査してやるわ。
ついでにチャーリーも。
「俺はドラゴンが恋人になる予定」
「仕事が恋人になるってことね…少し狡くないかしら。ちゃんと教えて」
「っ、わかったよ!発表します、俺、チャールズ・ウィーズリーの好きな人は」
面白おかしく始まってしまったのは告白大会。
チャーリーがレイブンクローの可愛いあの子について語りだし30分丸々使い果たした。
「へぇ…そんな子がいるのね」
「まあ好きじゃなくて気になる程度だけど」
「あれだけ魅力を語ったのにかい?」
「次はビルだぞ」
チャーリーはわざとらしくビルの脇をつついた。
「では発表しましょう。私ウィリアム・ウィーズリー、まず彼女は現在なし。好きな人は…」
ためにためるビルに私は思わず耳を塞ぎたくなる。
ただここで塞げばバレてしまう。
それだけは避けたい。
私は震える手に力をこめて膝の上で拳を作った。
「ダンブルドア校長です」
ふぅと息を吐き出す。
なんだ、ふざけた答えじゃないか。
「はあっ!ビル頭おかしくなったのか」
それに対してチャーリーは少し納得いかない(?)様子。
「ていうのは冗談だけど前ちょっと危なかったよ」
危なかったよって…どういうことですか。
確かに噂でダンブルドア校長は衆道の気があるとはきいたことがある。
そういう意味、なのかな。
「俺は最後にして先にナマエ、どうぞ」
「え、あ…じゃあ最後は荷が重いのでお先に」
私が口を開く前から2人は目を輝かせてこちらを凝視する。
かなり恥ずかしい。
しかもチャーリーにいたっては私が今目の前にいる人の話をするのだからにやにやも隠せない様子だ。
「笑顔が素敵でとても大人っぽい人。よく私を助けてくれたわ」
「それに私をきちんと受け入れてくれる。小鬼であることを忘れないでいてくれるし、それを理解してくれた」
「こんな人他にはいないってぐらい素敵な人よ!」
「75点。まだ魅力を話し切れてないな」
チャーリーはちっちっと指を振る。
75点って合格点?
とっても微妙。
ただチャーリーと同じくらい語らなければならないのだとしたら限界を突破することになる。
長い赤毛が綺麗で、お兄ちゃんしてる彼が大好きでとか言ったらバレるよね、すぐそれビルじゃんってなるよね!?
どうしても告白させたいらしいチャーリーに私は頬を膨らませるだけの小さな抵抗をする。
「俺にはすごく素敵な人に聞こえたよ。想いが伝わるといいね」
「ありがとう!私頑張る」
優しくフォローしてくれたビルに私はとっておきの笑顔で返す。
ビルは本当に素敵な人。
「最後はビル、ばしっと決めてくれよ」
反射的に耳をふさごうとした両腕をチャーリーが押さえつけてくれる。
身体はそれを拒もうとしてよくわからない攻防戦を繰り広げていた。
「俺の好きな人は、天真爛漫で自分の意見が言えるどんな苦境にも立ち向かっていく子かな」
「それは理想?それとも好きな人の特徴?」
チャーリーが必死に私の腕をつかみながらビルに質問する。
良い質問だけどもし後者だったら確実に私じゃないことだけは確定するだろう。
私は緊張した面持ちでビルが口を開くのを待った。
「半分理想、半分特徴かな。さすがに全部を叶えられる人なんているわけない」
「理想は理想にすぎないんだ。ただこれからに期待はするけど」
狡い。
私に性格を直せと言われている気分だ。
まあ直そうと思っている私がいるのは変えられない事実なのだけど。
「さて、もうそろそろ眠くなってきたんじゃないか?」
「1人で下におりてくるくらいだぞ?ビル、まだ眠くなるわけないだろ」
「え?私1人ではおりてきてないわ」
ビルの提案、チャーリーの反撃、私の疑問。
途中でなにか違うことに気付く。
「私、アーサーさんと下に来たもの」
「おいおい冗談はやめろよ」
「だって、私本当にアーサーさんに連れられて…」
「父さんが夜中に起きるなんてそうないけどなあ」
「屋根裏おばけだろ」
「あぁ、それなら納得かな」
どうやら私はイギリスのゴーストにまで心配されてしまったよう。
ホグワーツでも思ったけどゴーストがいるのが当たり前って思っている人たちのが何より1番怖いのは私だけかな…。
そんなことを考えていたらビルの好きな人の話なんかさっぱり忘れてしまった。
私ってば目先のことに捕らわれすぎ?