緋色の告白
□17
1ページ/1ページ
17ひきこもり日和
朝から気分は最悪だ。
昨日眠れなかったのも1つの要因だが朝食中に起こったあれが私の気分を底辺近くまで落としてくれた。
ウィーズリー家の皆さんと朝食を食べていたら梟が私とチャーリー、パースにフレッド、ジョージに手紙を届けた。
もちろん新学期に必要な物のお知らせである。
皆で開き今年は誰が先生だとか教科書が高いだとかそんな話で盛り上がった。
ジニーやロンにはわからないことばかりでつまらなそうに2人ともスープをすすっている。
もう少ししたらわかるようになるよとチャーリーと私で頭を撫でてやれば2人とも機嫌はなおりおかわりの声がいくつか重なった。
私もスープをおかわりしたところでビルと魔法薬学について話していたらノックもなしにあの子が入ってきた。
「ビル!私監督生になったのよ」
一気に視線は彼女に集まる。
そして私は思わず叫んでしまった。
なんと彼女がビルに抱きついてキスをしたのだ。
意味が分からなくて隣に座るチャーリーを見る。
彼は小声でレイブンクローの5年生なんだと教えてくれたが生憎私が知りたかったのはそれじゃないし彼女がホグワーツの生徒だったことはまったく知らなかった。
私からしてみればつい先日出会ったビルに好意を持っている女の子である。
しかも抱きついたりキスするような間柄じゃない。
「ミシェル、ちょっと外に行こう」
そんな彼女を押し返すようにして離しながらビルは立ち上がり彼女を外へエスコートしていった。
フレッドとジョージは面白がって口笛を鳴らす。
それをやめさせたのは意外にもアーサーさんだった。
モリーさんはというとうっとりしてビルたちを見ていた。
「昔の私たちみたいね」
「…モリー、場をわきまえなさい」
アーサーさんは意味ありげに私を一瞥する。
モリーさんはそれに気付いて私に軽く謝った。
逆になんだか恥ずかしくなった私は食べ終わったふりをして席を外す。
残ってしまったものはチャーリーの皿にちゃっかり移しておいた。
1人部屋に戻りベッドに腰を下ろして一息つく。
パースに借りた本を手にとって読み出すもののなかなか頭に入ってはくれなかった。
これじゃあ読んでも何の意味もない。
すぐに閉じてベッドに寝転がる。
目をつむってみると再生されるのはキスをする2人。
どんどんそれは深くなっていく。
ああ!
目をつむるのも駄目。
人の家だというのも忘れベッドの上でばたばたしてみたり転がってみたり。
ふとイェレに貰った呪文集の存在を思い出し私は鞄へと走る。
出してすぐにページをめくるとそこにあったのは私の手書きの呪文。
暇つぶし用と上に書いてある。小鳥をだす呪文などが載っている。
私はその中にあった蛇を出す呪文を唱え頭を撫でたり楽しく戯れた。
「ナマエ、チャーリーが呼んでるわ」
「っ、ありがとうジニー」
夢中になっていたら後ろにジニーがいたことに気がつかなかった。
なんてこと、私ったら。
ジニーに礼を述べ蛇に向き直る。
自分の集中力の偏りに溜め息をついていたら後ろから小さな悲鳴がきこえた。
「ナマエ、へ、蛇が…」
「あ、蛇?すぐしまうから」
「そうじゃなくて!あなた噛まれてるわ!」
ジニーに言われ腕を見ると確かに蛇が私の腕にかぶりついていた。
うわあ、なんという光景だろう。
笑えない。
「フィニート・インカンターテム」
「エピスキー」
普段からよく使う2つの呪文を駆使し一件落着。
蛇はおろか傷の1つも残っていない。
「痛くないの?」
ジニーが心配そうに私に尋ねる。
「痛かったかもしれないわね、でも私あなたに吃驚していて気がつかなかったわ」
違うことに意識がいっていると痛みに気がつかない、なんていうのを父が読んでいたマグルの読み物でちらっと見た気がする。
ジニーにそんなことを言ったところで首を傾げられるのは目に見えていた。
魔法族は医療を知らない。
ましてまだ年端もいかぬ子供、話が通じないのは当たり前だ。
私は誤魔化すように笑い呪文集をしまった。
ジニーは一仕事すんだことに気をよくし鼻歌を歌いながら部屋を出て行った。
私はお呼びだしがかかっているみたいだから次男坊様のところにでも行きましょうかね。
でも部屋から出るのも今はいや。
ビルや誰かに会いたくない。
チャーリーにだけ、会いたい。
だから私は部屋から出ません。
数十分後、外から誰かの足音がきこえた。
噂の彼だと思いたい。