緋色の告白

□18
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18なかなかどうして利口な君は

「入るよ」

「どうぞ、チャーリー…?」


ゆっくりとドアを開けたのはやっぱりチャーリー…じゃない!?
長い赤毛を揺らす彼を押し返して私はすぐさまドアを閉めにかかる。

「か、帰って!さよなら!」

「帰らないよ、俺には君に話したいことがある」

「私、チャーリーに呼び出されているの。ごめんなさい!」


ドアを閉めさせてはくれない彼に仕方なくドアを開け隙間をぬけて部屋を出た。
さすがの彼も不意打ちについてこれず私は捕まることなく逃走に成功したのだった。


「ステューピファイ!」


私は何を思ったのかポケットに入ったままの杖を取り出し失神の呪文をとばす。
絶対に逃げるために身体が本能的に動いたのかもしれない。
だがビルだって成人の魔法使いだ。
それをよけてすぐに杖をかまえた。


「エクスペリアームス」

「プロテゴ!」

武装解除呪文を盾の呪文で無効化する。
今度は私が彼にやり返した。

「エクスペリアームス!」


ビルの手から杖が落ちる。
彼は両手を挙げて降参ポーズ。

「拾おうとしたら次は石化呪文をとなえるわよ」

「拾わないよ。これ以上ことを大きくしたら怒られるのはこっちだ」


何を必死になっているのだろうか、私は。
話したいと言われただけで…こんなことまでして。
頭を冷やせ、私。
これじゃあ意識してますってばればれじゃない。


「ごめんなさい。つい熱くなってしまったわ」

杖をおろした私にビルは口をひきつらせた。
彼のところまで歩き杖を拾って彼に渡す。

だいぶ落ち着いた、身体も心も。
今なら話をきちんと聞けそうだ。


「ビル、やっぱり話をきくわ。チャーリーに断ってくるから待っていて」

私の表情に嘘がないと思ってくれたのかビルは顔の筋肉を緩ませて頷いた。
階段を駆け下りていくとチャーリーがソファに座ったまま上を指さした。

「呪文、丸聞こえだった」

「成人したもの、怒られないわ」

満面の笑みで返すとチャーリーは頭を抱えてため息をついた。

「母さんたちが怒る、双子が真似して退学にでもなったらどうするんだって」


腕を組み私を下からたしなめるように見た。
誤魔化すように斜め上を見たら彼は立ち上がって私の両頬をつまんだ。

「ビルもナマエも変なところで子供なんだよな」

「さっきビルには今はいくなって言ったんだけどどうやら機嫌は決闘のおかげで良くなったかな、お嬢さん」

私はぶんぶんと頭を縦に振る。
チャーリーが大きな口を開けて笑った。


「決着つけられるならつけてこい」


最後に頬を左右に引っ張りそのまま放された。
ひりひりする頬をチャーリーは指の背で優しく撫でる。
彼のあまりにもやわらかな表情に私は驚き目をそらした。

「顔色も良くなった!これで準備万端だ」

「うん、ありがとう」


私は軽い足取りで階段をのぼる。
しばらく待たせてしまったビルにはチャーリーと何かあったのかときかれたけど首を横に振っておいた。
ビルもそれ以上はきいてこなかった。


彼を部屋に招き入れベッドに腰掛ける。
隣に彼は座ってくれた。


さあ、話を聞いてやろうじゃないか。




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