緋色の告白
□20
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20君の影
新学期が始まり、私達は7年生という過酷な学年を"満喫"していた。
自分の将来のために授業を選んで、勉強をする。
予習復習は当たり前と言ったところか。
私は割に勉強は好きなため苦ではないのだが一部は毎日泣き言を漏らしていた。
そういえば、最近そんな生活と共に変わったことが2つある。
1つ目はチャーリーがやけに私にひっついてくること。
同じ授業を取っているときは必ず一緒に行こうと言ってきて、休日の朝も必ず談話室で私を待っている。
私自身は別にかまわない。
彼は親友だから。
問題はチャーリーに憧れている女の子たちだ。
美形で優しくて頭もいい、加えて監督生。
ビルには首席という名前がついたがチャーリーにはクィディッチのキャプテンで尚且つシーカーという名前まである。
しかも伝説のシーカー、なのだから人気があるのも頷けた。
あと個人的な意見だがビルよりチャーリーのがフレンドリーで近寄りやすい。
異性の好き、ではない人も多そうだ。
ビルのときも独り占めしてしまっていると思ったがまだまだ序の口だったらしい。
私はこの前たまたまこんな場面を見かけた。
チャーリーと違う授業が終わった後、中庭を通ると彼がたくさんの人に囲まれて話すところ。
満面の笑みのチャーリーに申し訳なくなった。
私にはあの笑顔をさせてあげる能力がないから。
そのとき喋っていた女の子に嫉妬も少しはあったけど、半分以上は感謝の気持ちを持った。
2つ目は彼とその兄、ビルがなんだかぎくしゃくした関係になってしまったこと。
ダイアゴン横丁で私がグリンゴッツ銀行に行ったあとアイスクリームパーラーに行くと2人は何故かぴりぴりとした空気になっていた。
その日からだ、チャーリーが私にやけにくっつくのも。
あの兄弟に何があったのだろう。
よくわからない。
手紙のやりとりを続けているビルに何かあったのか聞いても"Nothing"の一点張り。
まあ兄弟の揉め事に私が首を突っ込む理由もないからほかっておこう。
「ナマエ!おはよう」
寮から談話室に出て行くと思った通り、チャーリーがいた。
適当に挨拶を返し2人で大広間へ向かう。
「「おはよう、チャーリー、ナマエ!」」
2人で魔法生物について話しながら歩いていたら後ろから追突された。
もちろん声で犯人はわかる。
「フレッド、ジョージ、もう少し優しくぶつかって。貴方たちもうこんなに大きいんだから」
「「ごめんよ、ナマエ」」
2人のだいぶ高くなった頭を撫でながら謝罪を促した。
根は素直な子たちだからきちんと謝ることが出来る。
しかもしっかり反省して。
「チャーリーにもね」
「「ごめんなさい、チャーリー」」
「これからはやめてくれ」
ぶつかられた箇所をさするチャーリーはさながら身体の衰えを気にするおじさんのようだ。
まだまだ17歳の青年だというのに。
しっかりしてほしい。
その後双子は私たちの後ろに並んで歩き出した。
そんな私たちを不思議そうに見つめる視線がいくつもあることに気付いた。
私たちを、というには語弊があるか。
私を、だ。
大きくてきらきらした瞳が私の手を見ている。
実は耳も小鬼と同じなのだがそれは髪の毛で見えないため必然的に視線は手へと集まる。
これも7年目になれば嫌な感じはしない。
慣れとは凄いものだと思う。
ただ気になることには気になるが。
「気にしない」
無意識に握りしめていた拳を解かれた。
ほどいた張本人を見るとすました顔をしていた。
昔はキャンキャン周りに吠えてくれたけど今は冷静に対処。
前言撤回ね、彼はしっかりしていたみたい。
「なあ、今度はスネイプんところにくそ爆弾投げようぜ」
「いやフィルチにしよう」
後ろから聞こえてきた物騒な企みは聞かなかったことにしよう。
そう思ったのは私だけだったようでチャーリーは立ち止まって2人の頭を掴んだ。
「頼むからやめてくれ。グリフィンドールの点数が引かれる」
「「あとチャーリーがマクゴナガルに怒られる!」」
「…わかってるなら尚更だ」
がっくりうなだれるチャーリーにやっぱり年相応かと微笑む。
双子はそんなチャーリーを慰めていて通りすがりの同級生が爆笑していた。
私もつられて笑う。
パースもそこの横を通ったのだがため息をこぼしながら早足で大広間へ行ってしまった。
極力双子とは関わりたくないんだろう。
それを寂しく思いながらもパースを引き留めようとはしなかった。
彼らを引き合わせればまた何か事件がおこるに違いない。
これ以上チャーリーをへこませるのはさすがに可哀想だ。
そういえばビルからの手紙がめっきりこなくなってしまった。
今まで親しかった人が離れていってしまうのはやはり悲しいことだ。
ビルもパースも仲良く出来たらいいのに。
決して口には出さないけれど早く皆が仲直りして快く生活をおくれる日がくればなあと思っている。
たぶん、しばらくは実現しない夢なんだろうけれど。
大広間につくとチャーリーが大きく口を開いてこう言った。
「さあ、お待ちかねの朝食だ!」
どこかで聴いたその台詞に笑ってしまった私を3人が不思議そうに見つめてくる。
その顔がまたそっくりで私の笑みは深まるばかりだった。
みんな本当は仲良しなのよね。
ビルへの手紙にそう書いて梟を飛ばす。
今回は返事が来るといいな。
そんな期待を込めながら。