みじかいの

□ねがてぃぶぱーそん
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いつも朝、駅で見る男の子がいる。
私とは反対の乗り場にいていつもケータイを触っている金髪の男の子。

たまに、他の人と一緒にいたりする。
皆背が大きい。
遠くからでもわかる存在感のある顔に体格、1度見れば覚えてしまうような外見だった。
私なんかは毎日学校へ行くためにそこへ行くからほぼ毎日見ていて、当たり前のように顔を覚えた。


たまに、女の子に囲まれて困った顔をしている。
どうやら芸能の世界に生きている人らしかった。
確かに言われてみれば見たことがあった。

雪でも降りそうだ、と私はマフラーに顔を埋めながら今日も駅へ歩く。


休日の今日は何故か私がいつもいるホームに彼がいた。
1人でどきどきしながら彼の隣へ立った。
ちらりと横目で彼を見た。


?、なんだか暗い顔。
隈もひどい。

大丈夫だろうか。
落ち着きもなく見える。

もうすぐ電車がくるというアナウンスが入った。


彼の足が前へ出る。



スローモーションのようにそれは私の目に映った。
嫌な脈が私の心臓をうつ。
全身に響くような脈を。
凍える寒さの中、いつも以上に速い脈を。


私の腕は思ったよりもはやく、彼の腕を掴んだ。

私の冷たすぎる手にか、それとも急に捕まれたからかはわからないが彼の身体がびくり、震えた。

「…なんスか?」


彼が恐い顔で振り返った。


「電車がきていたので。線の内側にいないと危ないですよ」


「なんで、気付いてんだよ…」

小声で彼が呟いた。
かなり思いつめた低い声に私が今度は肩を震わせる番だった。


「貴方のことは全然知らないけど、死ぬのはよくないと思います」

必要とされているのに、どうしてそんなことを考えるのだろう。
不思議で仕方がない。


「なんスか、なんでそんなこと言うんスか。」

「そうですね、目の前で無惨に死んでる死体を見たくないから、ですか?」


私がへらりとそう言えば、ははっと渇いた笑いをされた。


「…そんな理由スか」

「まあ目の前で死なれるのは気分も悪いし、気が付いたら止めるのが常識でしょう」

なんて話している間に電車は出てしまっていた。

私はため息をつきケータイをひらく。
部活の先輩にメールをしなければならない。

私がケータイを取り出したことで彼もケータイを取り出す。
すると、彼のケータイが鳴った。

私はメールをうち、送信完了の文字を見てからケータイを閉じる。

それから彼に小さな声でありがとう、と言われた。


いいえ、どういたしまして。


まるで物でも貸したかのような軽いやりとりをした。


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