みじかいの

□夢の味
1ページ/1ページ




「ごめんなさい、私あなた達を見分けられないの」


レイブンクローの彼女はいつだって申し訳無さそうに俺たち双子をあしらうんだ。
何度ちょっかいをかけても覚えてもらえないのって結構辛いもんだぜ、ハニー。


とか言ってみるけど生憎彼女は俺のことも相棒のことも何も思っていないみたいだ。
興味がないから覚えない。
そりゃ当たり前だ。
俺だって興味がない占い学のことなんかちっとも頭にはいらない。


「やあ!」

「こんにちは」


廊下を珍しく1人で歩いていると彼女が歩いているのを見つけた。
思い切って話しかけてはみるが…俺を見て困った顔をする。
どっちかわかってないんだろう。
ほんと、悲しくなるなあ。
こんだけアピールしてるってのに。


「ごめんなさい、あなたはジョージ?フレッド?」



ほらな。
さてはハニー、覚える気がないのか?
意地でも覚えさせてやるしかないね。


「俺はフレッド。ジョージより洒落てて紳士なのが俺さ」

「…きの方か」


なにかをぼそりと呟いた彼女に首を傾げる。
彼女はわざとらしく微笑んだ。


「何もないわ。フレッド、私今からクィディッチの練習があるからごめんなさいね」

「見に行っても良いかい」


「あー…それはチョウに聞かなきゃわからないわ」


チョウ…あぁチョウ・チャンか。
セドリックの彼女の。
確かレイブンクローのチェイサーだったっけ。
ちなみにハニーもレイブンクローのチェイサーだ。


「じゃあ競技場でチョウに聞くよ。一緒に行こう」

「…おーけー」


何故か乗り気じゃないハニー。
どうしたんだい、クィディッチをしている君はとても輝いていて綺麗なのに!
なにが君をそうさせているんだ。
今すぐ俺が取り払ってやるよ!

「シャドーボクシングってここにもあるトレーニング方法なのかしら」

「?、なんだいそれ」

「私たちの世界にあるスポーツの練習方法」



そういえば、彼女はマグル出身。
スリザリンから悪く言われている場面にたまたま遭遇し何度も助けている。
なのに振り向いてくれないなんてほんとひどいよな。
涙がこぼれ落ちそうだ。


「穢れた血に血を裏切ったやつか、お似合いだなウィーズリー」

競技場へ向かう道、むかいから緑のネクタイをした集団。
中心に立つのは純血主義で有名な家柄のあいつ。

またか。
この前と同じやつだ。
実に面倒くさい。
横を歩くハニーを見れば眉根をよせむっとした顔をしている。
鉢合わせになるためもちろん俺らは立ち止まるしかない。
やつらは大勢でにやにやとこちらを見る。
俺とハニーは無言で睨み返す。
が、拉致があかないため俺がハニーのために前回と同じくこう言ってやった。


「お前なあ、前も言ったけどこの子は才能があってここに来た」

「魔法だって使いこなしてる。お前だって見ただろ、この前の変身術のテスト!彼女が1番だった」

「血より能力がある方が正真正銘の魔法使いなんじゃないのか」

「俺から言わせてもらえば、名前だけで何もしないお前らのがよっぽど穢れた血だ」


行こう、そう言って彼女の手をつかみ道をそれた中庭に出る。
まあ少し遠回りにはなるが競技場に行けないわけではない。


競技場が見えてきたところで思い出したように手を離すと(意図的に放さなかったのは言うまでもない)ようやく彼女が口を開いた。


「あなただったのね、今まで助けてくれたの!」

「へ?、おい嘘だろ!少なくともマルフォイに2回、さっきのやつに1回はああやって言ったぜ」

彼女は申し訳なさそうに俺を見る。
まさかジョージだと思ってたとかか?
そりゃ相棒のが真面目で正義感も強いけどな、俺だって好きな子の前では良い子になるさ。


「私、勝手にジョージだと思ってた!だって皆に話したら絶対にジョージだわって…!」

「女好きなフレッドがレイブンクローの私達みたいなのに優しくするわけないでしょって!」

おいおい、待てよ。
俺どんだけやなやつになってんだ。
ハニー、だからあんないつも探るような目で見てフレッドだっていうと口をへの字に曲げてたんだな。
今更理解。
泣けてきたぜ、相棒。
俺もお前みたいな人間になればよかった。



「…私の馬鹿!」



紅い顔をして小さくつぶやく彼女。
自分の頬をペチペチ叩く姿の可愛さは世界一だ、うん。
自分の表情筋が緩むのがこれでもかってくらい容易にわかる。
ん?、待てよ。
この表情、台詞から考えてハニーは…もしや俺のことが好きなんじゃないか。
今まではジョージだと思っていた優しいやつが実は俺で何勘違いしてるのよ私!→私の馬鹿!


ありえる、十分にありえるぞ。

「なあ、好きな人とかいる?」

彼女の顔がすぐさまこちらを向く。
さっきより真っ赤な顔。
良い反応だ。
さすが俺が見つけた原石なだけある。

「もしかして…悪戯好きな双子の片割れ?」


みるみるうちに林檎より赤くなるのは愛しのハニーのおいしそうな頬。
もちろんそれは肯定の意味を持つんだよな。


「俺も好きさ!マイハニー!」



気持ちが高ぶりすぎてハニーを抱きしめると彼女の小さな悲鳴が聞こえたがそんなのは無視だ。
嬉しくて嬉しくてたまらない。
リーにも言われたさ、あんな真面目を好きになるなんておかしいと。
ジョージにも珍しいもんだなって俺がしない賢そうな顔で言われた。


俺にだってわからない。
でもハニーが最高に可愛くて俺にとっては1番であることに間違いはないのだ。


「フレッド、苦しいわ!」



本気のトーンで言われたけどそれさえ愛の囁きに聞こえるのだから俺はそうとう彼女に惚れ込んでいるらしい。



「フレッド!」



怒ってるのも素敵さ、耳元で囁けば静かになるハニーは俺の大切な大切な宝物!





「えーっと…フレッド!」

「残念、ジョージだよ」

「はあ…全然駄目。わかりやすい違い作ってもらえないかしら…」

この子、本当に相棒のこと好きなのか少し心配だよ、フレッド。


end

フレッドにはいつも幸せでいてほしいので、出来るかぎり学生時代を書きたいなと思っています。
ちなみにゴブレットくらいの時代のつもり。
セドリックはまだ生きてます。
髪の長いチャラ双子な感じです。
ただジョージが良い子に見えるのは若干の行いの違いと表情の違いな気がします。
あ…ハニーって男の人に使うのか…でぃあとかのが良かったのかな…まあいいや

Title by hazy

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ