みじかいの

□一等星の憧れ
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星を眺めるのは幼い頃からの日課だった。
天文学者であった父は私にいつも家にある天体望遠鏡をのぞかせた。
そして自分の知識を叩き込んだ。
もちろん私は星が好きになった。
今となっては見ないと落ち着かないくらいに。
だからこうして今日も私はホグワーツの天文台から空を眺めるのだ。


将来は私を天文学者にと思っていたらしい父だったが残念なことに私は魔法使いになる道を進むことになった。
父はホグワーツを出たもののマグル界でさらに天文学を深めた変人で、母もボーバトンの卒業生。


この2人の子供に魔法使いの才能がないというのもおかしな話だ。


「お前毎晩毎晩暇だな」

「シリウスは毎晩毎晩女の子と大変ね」

「よけいなお世話だ」


今日も今日とて天体望遠鏡を覗いていたら誰かが上ってきた。
言葉とは裏腹に優しくカーディガンを肩に掛けてくれたのは同じ寮のシリウスだった。
さすが女たらし、と思いながら望遠鏡から目を離さずに礼だけは述べておく。
シリウスはつまらなそうにため息をつく。


「そんなに星ってのは面白いか」

「少なくとも貴方よりはね」

「つれねえな」


この人は自分の名前が星の名前だっていうのに興味もないのか。
しかも一等星で1番明るい星だというのに。


「昨日はあなたの弟が来たわ。彼のが面白かったわよ」

「あいつに負けるとは不名誉だな」

「じゃああなたも望遠鏡から私を離させてみて」

「物理的な攻撃はごめんよ」


私の発言にシリウスは嫌らしい声をだした。
はあ…そういうの嫌い。
やめてって言ってるのに。


「シリウス、怒るわよ」

「わかったわかった」



「俺の名前の話をしてやるよ。聞き飽きているかもしれないがな」


彼はシリウスについて語った。
面白い。
他に感想を述べる必要があるかしら。
彼の星はあまりにも有名すぎて付け足すこともないわ。
離れて話してあげましょうか。

あの話を。


「シリウス、私もおもしろい話をしてあげる」


急に望遠鏡から目を離した私にシリウスはかなり驚いたみたいで私に近寄ってきて頭を軽く叩かれた。
私がむっとすれば彼はおかしくなったかと思った、そう言いやがった。

咳払いをして場を引き締める。

「レグルス、という星を知っている?」

「英語読みすればレギュラス、そう貴方の弟さんの名前だわ」

「その星はしし座の一部で…」

「浪漫があるのはここからよ」

自然と口元が緩む。
ああなんて素敵な名前。
この名をつけたお母様に、この運命を与えた神に感謝を。


「獅子の心臓、小さな王なんていう別名があって」

「そして一等星の中では1番暗いの」

「貴方たちの関係にそっくり」


「大好きよ、浪漫しかない」

「シリウスは明るくて人気者だわ」

「レギュラスは落ち着いていて静かだけど人を寄せ付ける何かがある。しかも正義感だって強い」

「…あいつは死喰人だぞ」

「そんなの何の意味があるの?彼は人としてしっかりしている、貴方よりずっといい男よ」


シリウスは私の両肩をつかみ、少しかがんで私に目線をあわせた。
シリウスの綺麗な瞳が私を真っ直ぐに見据える。


「お前のそういう人をきちんと評価できるところは好きだ。でもな、現実から目を背けるな」

「お前の両親を殺した死喰人とあいつは同じなんだよ」



認めたくなかった。
彼が両親を殺した人達と仲間だなんて。
昨日だって私に普通に話しかけてくれた。
でも私は堪えきれなくて彼に怒りをぶつけた。
貴方はあんな人たちとは違うのよね?、最後に私が彼に問いかけた。
彼は何も言わずに天文台から去っていった。


彼だけは違うのだと信じたかった。
沈黙は肯定、つまりそういうことだ。


「あいつはあいつなりに慰めたかっただけだと思う。俺とは違ってレギュラスは人間的に頭がいい」

「あいつはわかっていたはずだ、お前が怒りをぶつけることくらい」

「だけどお前が執拗に自分を庇おうとするのを見ていられなかった」

「だから自分で認めることにしたんだ」

「これ以上首を絞めさせないでやってくれ」


最後まで私から目線をはずさなかったシリウスが俯いた。
綺麗な雫が床に落ちる。
この人も弟を嫌いながらも評価していたのだろう。
抱きしめたりするのは性に合わないから背中を優しく撫でてやった。


夜空では一際明るいその星の周りを流れ星が流れていく。
地位あり、勉学の才あり、器量よし。
そんな人の悩みほど深いのはなんだかおかしなものだなと思う。
私は何人もの人を見てきた大好きな星たちに才ある人たちが少しでも楽しく生きられますようにと願うほかなかった。




end
原作との矛盾があるような気がします。すみません。
さらっと見逃してください。

Title by hasy


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