みじかいの
□少女思考
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「東堂くんって美人だよね!」
「うん、ちょっと残念だけど」
高校3年生の私達は正直受験生といってもただの高校生にすぎない。
かっこいい男の子がいれば影から愛で応援し、噂話ばかり口にする。
しかもまだ春先、部活に精を出す子のが多いくらいの時期だ。
私たちも例に漏れず部活に精を出しそして男の子にも興味をもっているくちだった。
私たち3人は箱根学園に在籍し3人共部活こそバラバラだが応援している子は一致していた。
もちろん、同じクラスの自転車競技部所属山をも眠るスリーピングクライム、クライマーの東堂尽八くんである。
私は勇気もでなくて眺めるに留まっているが他の2人はかなり積極的で試合にも欠かさずかけつけ応援している。
『指さすやつやって〜!』は彼女たちの口癖にも近い。
そんな彼女たちを尊敬しつつ若干引いてしまう自分がいるのも事実だった。
「そういえばもうすぐ小さい大会あるんだよ、最後の年だしどう?」
「そうだよね…最後の年だもんなあ。でもうーん…」
「行けば癖になるよ。あっちは知らないけどあたしは自転車競技自体も大好きになったね」
「わたしだって大好きだよ!ツールドフランスは毎年見込んでるもん」
昼休みに大会へのお誘いを受けたはずがいつのまにか2人は自転車談義で大盛り上がり。
私も知らないわけではないしツールドフランスなんかは家で父が観ているのを横目で観ていたりもする。
だけど如何せん私自身は自転車に乗らない。
そこまで興味があるわけでもなく車種の話をする域以上をいく彼女たちについていけるわけないのだ。
私の知識は全体的に浅く広い。
中途半端な人間で本当に深く掘り下げている人から見れば苛々する部類だと思う。
そんな私は1人寂しく紙パックに入ったカフェオレをすする。
2人の邪魔をできるほどの勇気は持ち合わせていなかった。
あー暇だ。
椅子を前後に傾けながら暇をつぶしていると誰かに首をがっちりホールドされた。
「借りてく」
そいつはそれだけ言って私を教室から引きずり出した。
2人はにそにそしながら私に手を振る。
やめてよ、東堂くんがこっちを訝しげに見てるじゃない!
「靖友!教室でああいうのはいただけないなあ」
「ああ゛ん?何か文句あんのかヨ」
「ございません」
完全に私が尻に敷かれているこの人は荒北靖友。
所謂お隣さんというやつで両親の仲は良好だ。
私たちはそこそこ。
なんだって呼び出されているのか理由は想像もつかない。
「福ちゃんが次の試合見に来いって。うちからは不思議チャンと東堂がでる」
「インハイの予行練習にでもしろだとヨ」
ぶっきらぼうに教えてくれた靖友が私には可愛く思えて仕方がない。
昔はリーゼントできらっきらのだっさい(本人曰わくかっこよかったらしい)バックルつけてバイク乗り回してたこいつが…今じゃこれだよ。
まったく福富くんのこの3年間の教育には脱帽せざるをえない。
福富くん、君は本当に凄い。
「なんか靖友…可愛くなった」
「はあ゛!?」
「いや、えらく素直になったよねと思って」
「知るか。」
靖友は顔を真っ赤にしながら昔みたいな歩き方で帰って行った。
よし、ここまで皆に行くことを勧められるんなら行くっきゃない。
東堂くんの勇姿を見ようじゃないか。
「めっちゃいい天気じゃん!」
「ほんとね」
「…2人共気合い入り過ぎじゃない?」
「「いつも通りだけど?」」
大会当日、天気は晴れ。
春だから寒さも未だに残っているが日差しは容赦なく照りつける。
2人は動きやすそうだが気合いしか入っていない服装で旗まで持っている。
私はまあそこそこな服装で帽子をかぶっての参戦だ。
なぜか2人には鬼気迫るものを感じる。
私は少しだけ距離を取りながらスタート位置まで歩く。
小さな大会なだけあって参加者は少ない。
箱学でも出ているのはクライマーと呼ばれる人だけらしい。
さっき出会った新開くんが言っていた。
なるほど、確かにこのあたりは坂道が多く山もある。
というのは靖友も言っていた。
これは東堂くんにはもってこいのレース。
胸がどきどきしてきた。
どんな彼が見られるのだろう。
「あっ東堂くん発見!」
「え、どこどこ?」
「あそこあそこ」
2人が指差すほうを見ると確かにそこには東堂くん。
隣には1年生の真波くんも見える。
東堂くんは今の声で気付いたのかこちらに視線を向けた。
いつも通りの自信たっぷりな笑顔をみせる東堂くんに2人はあの口癖を言って楽しそうにしている。
私はそれを眺めるだけで東堂くんには軽く会釈したくらいだ。
2人は他にも推している子を捜すとかでどこかへ行ってしまった。
特に興味をそそられない私はそこで東堂くんたちのやりとりを見ることにした。
スタートの時間が近付き周りもにぎわってきた頃ふと東堂くんがこちらを見た。
そして口パクで何かを言ってきた。
見てろ、よ?
そりゃあ見ますとも。
私は必死に首を縦に振る。
彼はカラカラと笑っていた。
スタートの合図がなる前には2人も戻ってきて3人での観戦となりそうだ。
さっきのことを話すのはやめておこう。
後々が恐いもの。
数分後空砲がなり選手たちは次々に走り始める。
東堂くんがスタートしたと思ったところで振り返り私たちの方を見てパチンと音が鳴りそうなくらい綺麗に片目を閉じた。
い、今のは俗に言うウィンクってやつですか!?
私は思わず黄色い悲鳴をあげていた。
他の2人から不審そうに見られ私はウィンク、ウィンク!と東堂くんを指差した。
が、2人は見ていなかったと言う。
これは私のためだけにしてくれたと勘違いしてもいいですか?
そのあとはふわふわした気持ちのままレースを観て優勝した東堂くんに拍手を贈った。
表彰式後、東堂くんはこちらに来て私の頭をぽんぽんと撫でてこう言った。
「ようやく来てくれたのだな」
ああ神様、やっぱりそういうことですよね!
レースに誘ってくれた友人と靖友、どちらもがぜひ行くべきだと言った…これは神様の悪戯でしょうか。
今だけは少女漫画みたいな展開を信じさせてください!
「東堂、収拾つかなくても知らねえからな」
「まあ俺にかかれば誰でもああなる」
「うぜぇ」
「うざくはないな」
靖友があきれた顔で私と東堂くんを見ていた。
end
東堂さんは原作はうざ可愛くてちゃんたまさんのときは面白く可愛いですけどかっきーさんだとキザだなあって私は思っているので今回はアニ東堂さん…?