みじかいの

□ろ組と勉強会
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テスト週間、それは学生の私たちには逃れられないものである。
私たちは今作兵衛の家で勉強道具をひらいていた。


「あー眠いぞぉー」

「俺と走りに行くか」


「2人ではやめろ」
「2人でいくのはおすすめしないな」


作兵衛が左門、私が三之助の腕をつかみ外に行こうと立ち上がったのを止める。
左門はそうかーなんて笑顔で座り、三之助はつまらなそうな顔をして私の腕を優しく払った。

「トイレ行ってくる」

「左だからな」

「知ってるっての」


ドアを開けてやっぱりなんて言ったら失礼だけど右に曲がった三之助を見て反射的に私と作兵衛が立ち上がる。

作兵衛が私を一瞥してから三之助を追った。
階段を降りていく音がする。
わざわざ三之助は1階のトイレに行く気らしい。
左に曲がったらすぐなのに。
ため息をつきながら私はわくわくしている左門を抑え2人の帰りを待っていた。
私たちの勉強会は迷子組のおかげで滞りなく進んだことは1度だってない。

私は2人を待つ間に左門にノートを開かせ問題を解かせる。
左門は数学は得意だし国語だって悪くはないのだがなにせ課題を'だせない'から成績はある程度それ以上にもそれ以下にも動かない。
だからこうして今回もテスト週間に集まったのだ。
もちろん、三之助も右に同じ状態なので先生たちも助かる一石二鳥な勉強会なのである。



2人はその後無事に戻り黙々と勉強を始めた。
私のペンが止まると必ず誰かがこちらに気付いて教えてくれる。
まったく誰のために開いた勉強会なのかわからない。
まあ目的が勉強を教える、ではないのだからあれだけれど。
私はこの勉強会は教える側ではなく残念ながら受け手の生徒だった。


「そこはlogで考えるといい」

「等比数列の一般項の公式ぐらいわかるよな」

「そのじは打消意志、まあ打消推量もわるかねえが」



それぞれ3人は得意教科で素晴らしい才能を見せてくださる。
この勉強会1番有意義なの私じゃないのかな。
左門は割と感覚派だから教えるのはけしてうまくない、でもヒントにはなる。
三之助は口は悪いし無愛想、教え方はうまいのに。
作兵衛は真面目にしっかり教えてくれて、私がわかっているところまでやってくれる。

「私3人と幼なじみで良かったなあ」



「「は?」」

「急に何を言っているんだ?」

「いいえ何でもありませんよ」


一気にピタリと止んだペンの音に笑いそうになりながらも私は平然を装いまた書き始める。
すると左門は首を傾げて他2人はまたペンを握り直す。


こうして私たちはまた迷子組を抑え込みながら勉強会を開くのだった。


end

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