rkrn

□かなわないのはどっち
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※若干クロスオーバー


「人恋しくてつい学園に来てしまった、ただそれだけよ」



珍しい客が来ていると朝から噂は聞いていたが本当に来ていたとは。
学園内の庭を歩いていたら偶然出会った。
だから、理由をきいてみた。
何故、卒業生でもない君が学園に?。


「どこの城の忍者かも聞かされていない君を学園内にいれるなんて小松田さんはなにをしているんだか」

「先生方は知っているわ。鉢屋くん、君に言うつもりはないけれどね」



嘲笑を私にむけ、唇の前で人差し指を立てる彼女は数歳違いもしくは同い年かもしれないはずなのに大人びて見えた。
だが、それはどこか滑稽だ。
いつ会っても彼女は飄々としているが、弱いところが垣間見える。
だからだろうか。


「言われなくても自分で調べるさ」

「いつかは敵になる。そのとき自然にわかるのだから無駄な時間を過ごすのはやめなさい」


次は厳しく叱る顔。
これはなかなか様になる。
弟や妹がいるのかもしれない。

「それにしても…どうして君なの?鉢屋くん」


今度は哀しく笑う。今にも泣きそうだ。
どうして私を見て哀しく笑う?私が泣きそうだ。


「鉢屋くんが一番似ているから…思い出してしまう」

「私があそこでよけなければ…」


ついに泣き出した。
それはそれは静かに。
つぅーと流れる涙以外泣いている要素がない。
声を荒げて泣き叫ぶでもなく、嗚咽を漏らすわけでもなく、ただ彼女は泣いたのだ。


「声を荒げる泣き方もすすり泣くことも遠の昔に忘れてしまった。私はそうやって泣きたくとも泣けない」

「声をだして笑うことも置いてきた。綺麗な女ははしたなく下品には笑わないから。でもあの方の冗談には前者のようでありたかった」


苦痛にたえるような顔を見ていられなくて私は彼女を抱いた。
腕の中に収まった彼女は体を石のようにこわばらせる。
私はそんなこわばった肩を優しくなでた。
すると彼女は安心したような一息をついた。


「泣けないのではないのだからいいだろう」

「笑えないわけではないのだからいいじゃないか」

「私は嘘のそれしか、ここにくるまで出来なかった」


私が言葉を切った数秒後、彼女は弱い力で私を突き放した。
顔を見ると先程より涙の量があきらかに増えていた。


「…鉢屋くんはここで出来たご友人を大切にね」

「私には友人がいなかったから彼にしか頼れなかった」

「三禁なんてくそくらえね」

「そんなだから大切な人を亡くすんだわ」


彼女は懐から狐の面を取り出し、顔につけた。
それには模様以外の鮮やかな赤が描かれている。
他にも赤黒い斑点がまばらについているのが遠目にもわかった。


「でも、もう悔いはない。私はやれるだけのことはしたのよ」

「どうか、貴方だけは幸せに」

慰めてくれてありがとう。



私の耳にそう届いた頃には彼女はいなくなっていた。
その後にきいた話だが、甲斐の武田軍武将真田信繁に仕える忍が死に、仇討ちのようにしてその忍を殺したとされる武将の城が全滅、そして全壊していたという。



適わない女性だと思ったのは人生の中で彼女だけだった。


私はその話をきいた後叶わなかった彼女の想いがどうにか報われるようにと願った。


end.
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rkrn×一応bsrでした。
たぶん同じくらいの年代かなあっていうのと2人が似ているなあと思いまして。


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