時の歯車
□キト・ラザン
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数分後、クリスは一本道を進んでいた。
クリス「…だから、無茶すんなって言ったのに」
ロイス「…ははは」
クリス「笑い事じゃない!やめとけって、言ったじゃんよ」
ロイスの腕を肩にかけて、クリスは細い体で支えて歩いていた。
ロイス「だって、あそこで他にどうしようもなかったろ?俺一人じゃなかったし、仮にも―…仮にも女のお前がいたんじゃ」
クリス「仮って何よ、置いてくわよ。
…まあ、無事で何よりだけど…こんな、あたしが肩かさなきゃ、歩けないくらいになんないでよ」
ロイス「悪ぃな」
それから少しだけ、珍しく二人は沈黙した。
みんな、どうしているだろうか。
そんなことを、ふと考えた。
クリス「ねえ、ちょっと疲れた」
ロイス「もう?」
クリス「あんたが重いんだもん!」
ロイス「う…。ごめんごめん、休もうぜ」
クリスは道の端にロイスを座らせ、自分も腰かけた。
クリス「はぁー、肩凝ったぁ」
ロイス「なんか、年寄くせぇ」
クリス「あんたに言われたかないわよ」
クリスは首をぐるりと回すと、両手で足の怪我を押さえる。
クリス「痛いなぁ…」
ロイス「!…そうだ、お前も怪我してるんだったな…ごめん、大変だったろ」
クリス「…別に。このくらい、どうってことないわよ。…にしてもさぁ。…なんなんだろ、この怪我…起きたらこんななっててさ」
ロイス「俺も、着地に失敗して川に落ちそうになって…そしたら、後ろからなんかが当たってきて…目が覚めたらこうだった。
びびったぜ、俺あのネッシーにボコられたのかと思った」
クリス「違う。あたしが、川渡るまでの一瞬よ」
「バリヤドリッド・ボントだ」
クリスとロイスは、飛び上がりそうな勢いで、同時に振り返った。
突然、背後で低い男の声がした。
二人が振り返るとそこには、
茂みの中に、長身の男が立っているではないか。