他校

□Memory
4ページ/4ページ





そして…、

迎えた卒業の日。





いろいろあった
高校三年間。




もう、今日で離れ離れだね。




部活の卒部式も終わって、
戻ってきた教室には、
高橋君が一人だけいた。





「よぉ。」

椅子に座って
声をかけられた。


「何してるの?」



「ん?

思い出に浸ってた。」



高橋君の隣の席に座る。


と言っても
最後の席替えで
隣同士になったのだけれど。




「なんか卒業したっていう
実感が湧かないんだよね。」


クラスより部活のほうが
思い入れがあるから

もっと楽しみたかったと、
何となく心残りもあったりした。




「実際、俺もあんまり。

部活のほうが
思い出多いし。」


「うん、私も同じ(笑)」



お互いに顔を合わせて笑う。







「何だかんだ言って、
この高校でよかったよ。」


「私も。
沢山、学べたし!」


しかし、それだけではない。



「実はね…

部活も毎日やってきて、
ソフト人生もかけていたんだけど…


本当はね、最後の試合
出してもらえなかったの。」



文化祭準備の日、
チャンスを
もらえなかったというのは

そういうこと。




「耐えるとか、我慢するとか、
練習もそんなだったから…

見透かされてたんだと思う。私。」



本当に悔しかった。
今でもチクチクしたトゲが
突き刺さっているようだった。



「だからか…、
元気ないように思った。」

今思えば、
あの時のクロワッサン、

高橋君の優しさだったんだ。




「本当に悔しかった。

…後悔もあるけど」


― この後悔は残したままに
しておきたいんだ。




私の導き出した答えだった。




「そういうことなら、
ソフト続けたらいいじゃん?」




高橋君はそれがあるから
大学でもバスケ続けるんだよね。




「なんかさ、苦い思い出を
今後の教訓にしたいんだ。」



中学からの六年間、
ソフトをしてきて
本当に楽しかった。


実を言うと、
中学のときの最後の試合、
私のせいで負けてしまった。


…私のミスで、
一点差で負けた。




それを晴らすべくして、
この高校を選んだけど、


残ったのはやはり後悔。



自分がいけないんだけどさ、
もっとやれたなって。


キツさが先行して、
妥協していた私の結果だ。


大学でソフトしても
これを繰り返しそうな気がして…




続けないことにした。







「でも、
これからは、
新しいことに挑戦するの。
大きな夢ができたんだ!」


「へぇー。
じゃあさ、その夢、
叶ったときに教えてよ。」


今聞くのではなくて、
叶ったときに教えて、
と高橋君。


案外、私の性に合ってるかも。






「うん!
一番に教えるから☆」





卒業の日に交わした、
最後の約束だった。






「じゃあさ、忘れないように!」


高橋君が手から渡された物、

「…名札?」


それは
学校のクリップ式の名札だった。





「名前もちゃんとあるし、
誰に教えるのか忘れないでしょ?笑」






ニコッと笑う高橋君。




「じゃぁ、私のも持ってて!」




夢が叶うまで、
応援していてほしい。



そしたら、
今度こそ頑張れる気がする。



高橋君への気持ちは
閉まっておくことにした。


でも、
夢が叶った日に伝えることにする。



今までだって、
見てるだけで、
応援していたいと思うだけで、
よかったんだ。


いつか、伝えるから…


それまで、忘れずに待ってて?






高橋君…。












「ありがとう!」











思い出とともに

明日へ…






私たちは少しだけ
大人になった。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ