短編集・読み切り
□3.Spiel
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ギシッ
上半身を投げ出された衝撃と投げ出され
た何かが軋む音に、泥の淵で揺らいでいた
意識を強引に引っ張り上げられた。
覚醒するや後頭部に重い鈍痛がのしかか
ってくる。
瞼を開いても視界が真っ暗なのは目隠し
をされているからだと未だに鈍い思考で理
解する。
とにかく起き上がろうと手をつこうとし
て、背中の向こうに回された手首がビクと
もしないことに気づいた。
頭痛は連日の睡眠不足が原因ではないの
ではないかと思い当たったのは、そんな状
況下で背後にはっきりと人の気配を感じた
からだ。
カチャカチャとどこか耳慣れた金属音が
埃っぽい部屋の空気を揺らす。
それがベルトを解く音だと気づいた時に
はもうベルトは抜き取られて、何故という
問いが追いつくより先に下着ごとズボンを
引き下ろされていた。
冷たい床に膝をついているからズボンは
膝のあたりまで落ち、剥き出しの尻が空気
に触れた。
背後にある人の気配が僅かに嗤ったよう
な気がする。
遠い昔に覚えがあるような、そんな嗤い
だった。