不思議の館

□TRICK-or-TREAT
1ページ/5ページ

ある10月の終わり頃の夜、
お化け界から様々なお化けが
街に繰り出していた。


「あれ…ここどこ?」


先生お化けとはぐれ、
街をさ迷っているのは、
今回初めて街に出て勉強をするはずの
お化けソンジョン


「あぁ…本当に道に迷ったみたい。
どうしよう…」


みんなから一人はぐれ、
今にも泣きそうだ。


「おい、どうした?」


そこで声を掛けてくれたのは、
慣れたように街を回っていた、
吸血鬼のソンギュ


「僕、初めて街に出たんだ。
先生と仲間達と一緒にいたんだけど、
はぐれたんだ…どうしたらいいのか…」


目に涙を溜めて話すソンジョンに、
ソンギュは言った


「俺が、街を案内してやる。
その内に仲間達にも会えるだろ。
な?だから泣くな」


初めて街に出て、
はぐれた事に心細い思いをしたが、
優しく話し掛けてくれるソンギュを
信じて頼る事にした。


二人で街を回っていると、空の上から
間抜けな声が聞こえてきた。


「うわぁぁー落ちる!!」


ホウキからぶら下がり、
今にも落ちそうな
魔法使いの見習い、ソンヨル。


「またお前か。まったく…」


ソンギュは、そう言いながらも、
空高く飛び上がり、
ホウキにぶら下がるソンヨルを
地上に降ろした。


「慣れないんだ、まだ…」


タメ息を吐きながら、
困った顔をしていた。


ソンジョンは、ホウキで空を飛ぶ
ソンヨルと、助ける為に空高く
飛び上がったソンギュに
好奇心が湧いた。


「僕、ソンジョン!!
今日初めて街に出たんだ。
空高く飛ぶってカッコイイね。
僕も憧れてるんだ。」


興奮混じりのいきなりの自己紹介に、
ソンヨルは目を丸くしていた。


「あ…僕は、魔法使い見習いソンヨル。
よろしく」


ソンヨルに続き、自己紹介した。


「俺は吸血鬼のソンギュだ」


お互いに自己紹介をして、
お辞儀をした。


「ソンヨル、良かったら、
一緒に街を回るか?」


「あ、うん。行く!」


そして、3人で街を回る事になった。


しばらくすると、向こう側から
鐘の音が聞こえてきた。


カラン…カラン…


初めての事に、
ソンジョンは少し騒いだ。


「ねぇ〜あれ、何!?」


するとソンギュは、
鐘を鳴らす人物を指差し、言った。


「あいつは、闇の番人だ。
時間になると、闇の城から
街に繰り出して、巡回するんだよ。」


すると、それに気付いたのか、
闇の番人がソンギュ達の方に向かって
歩いてきた。


「やぁ、また会ったね。」


気だるそうな笑顔で話し掛けてきた。


「毎年だろ!俺は飽きる程
お前の顔を見てるよ。」


ソンギュと話していると、
うしろをちらりと覗いた。


「あれ、見掛けない顔だな。
知り合い?友達?」


自分の事を言われていると気付き、
自己紹介をした。


「はじめまして。僕は今日、
初めて街に出てきたソンジョンです。
よろしくお願いします」


そして、それに合わせて
自己紹介をしてくれた。


「俺は闇の番人、ウヒョン。街で
危険な事をしているお化けがいないか
見回ってるんだ。よろしく」


それに対してソンヨルは、
忘れられているようで
少し不機嫌だった。


「ね、僕の事忘れてない?」


するとウヒョンは、呆れたように
ソンヨルに言った。


「お前さ、毎年ドジ踏んで
迷惑掛けるのやめろよ。
俺だって、お前に構う暇なんて
ないんだからな。」


「ふっ…」


それを聞いたソンギュは、
呆れたように鼻で笑った。


ゴーン…ゴーン…


楽しく話していたが、
ウヒョンが急に慌て出した。


「いっけね…闇の城の鐘なったから
行くわ。じゃ!」


あっという間に、姿を消して
去って行った。


それを不思議に思ったソンジョンは、
首を傾げた。


ソンギュは、不思議そうにしている
ソンジョンに説明をした。


「あいつが急いだのは、闇の城の鐘が鳴ると、巡回終了の合図なんだ。
それまでに帰らないと、
城の門番をさせられる事になる」


納得したソンジョンは、
ウヒョンが間に合う事を
心の中で願っていた。


それからまた、街を回っていると、
黒い影に隠れていた黒ネコが
歩いてきた。


するとソンギュは、黒ネコに向かって
話し掛けた。


「おい、お前だろ?」


すると、人間に黒い毛と耳やシッポが
生えたような姿に変わった。


黒ネコは、バレたと笑いながら
ソンギュ達を見ていた。


「そのお化け、見掛けない顔だね。
新人?」


心の中を探るような鋭い眼差しを
ソンジョンに向けた。


少し恐れつつも、
自己紹介をし始めた。


「僕は、ソンジョンです。
今日初めて街に出たんだけど、
仲間達とはぐれて困っていた所を
助けてくれたんです。」


すると、鋭い眼差しから、優しそうな
眼差しに変わり自己紹介を始めた。


「俺は、黒ネコのエル。
人間の姿をしている時は
名前が違って、ミョンスだよ。
見習い1年。よろしく」


そう言うと、黒ネコの姿になって
闇に消えていった。


もう少し話したそうにしている
ソンジョンを見て、
ソンギュは軽く笑いながら言った。


「あいつ、人見知りなんだ。
気に入ったやつには、
また来年会いに来るだろ」


そして、ソンジョンではなく、
ソンヨルを見てまた鼻で笑った。


「ふっ…またお前、スルーされたな。」


ソンヨルの顔を見てみると、
頬を膨らませ、
プンプンと怒っている顔だった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ