不思議の館

□TRICK-or-TREAT
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ソンギュはもちろん、
ウヒョンやエルとも顔見知りなのに、
ソンジョンにしか話し掛けない事に
少しやきもちを妬いていた。


ソンヨルは膨れっ面のまま歩き、
ソンギュは少し退屈そうで、
ソンジョンはとても楽しそうに
街を見ていた。


月の明かりが雲に隠れたその時、
目が赤色に光っているオオカミが
現れた。


「ふぅ、危なかった〜」


ちょっと焦りつつ、
何だか楽しそうなオオカミに、
ソンジョンは質問した。


「ねぇ〜オオカミさん、
どうしてオオカミさんの目は
赤く光ってるの?」


オオカミは、少し恥ずかしそうに
答えた。


「月の明かりが見えたら、俺の体は
もっとオオカミの鋭さを持って
凶暴になる。だから今は、
月の明かりが少し見えたから、
目が赤く光ってるんだ。
でも、今日はこのまま月は
雲に隠れるみたいだって」


ソンジョンは、
襲われる心配がないと感じ、
そばに寄って毛並みを撫で始めた。


「オオカミさんの毛は、
少し硬いけど、フワフワしてるね。」


撫でられてくすぐったいのか、
少しくねくねと体をねじった。


しばらくして、撫でるのを止め、
自己紹介をした。


「僕はソンジョン。今日初めて
街に出たんです。
何もかも初めてなので、
よろしくお願いします。」


ソンジョンの自己紹介を
ニコニコの笑顔で聞き、
自己紹介を始めた。


「俺はオオカミのドンウ。
月の明かりがない時は、
街に出るからよろしく」


丁寧に頭を下げてお辞儀をした後、
ソンヨルに話を掛けた。


「よっ、ソンヨル!
少しはホウキで空飛ぶの慣れた?
あと、俺達の遠吠えに
いい加減慣れないと。」


ドンウは、面白そうに笑いながら
話した。


ソンヨルは、まだ膨れっ面のまま
ドンウに話した。


「あのさ、
僕が空を飛んでるタイミングで
吠えるのやめてくれない?
絶対、邪魔してるでしょ!」


そう言うと、
ドンウはゲラゲラと笑い出し、


「はははっ〜バレた?
ソンヨルの姿を見ると、
つい吠えたくなってさ」


ドジ踏む姿を思い出したのか、
お腹を抱えて笑った。


それを見たソンギュは、


「お前さ、笑いすぎ」


少し軽蔑するような目で
ドンウを見ると、
ソンジョンが口を開いた。


「ねぇ、2人は仲悪いの?」


それを聞いたドンウは、
笑いを堪えて静まった後、


「違う違う!
俺がバカみたいに笑うのが
子供くさくて相手にしないだけ」


それを聞いたソンジョンは、
なぜか不安になった心が
ふんわり解けた気がした。


「こいつ、バカみたいに笑うだろ?
もう少し押さえて
笑って欲しいんだよな」


苦笑いしてドンウを見るソンギュは、
嫌いな人を見る目ではなく、
家族を見るような優しい目だった。


4人が楽しく笑っていると
ドンウの様子がおかしくなった。


「嘘だろ〜
今日は月が隠れるって言ってたのに…」


ドンウの目は赤く光出し、
毛が逆立った。


それを見たソンギュは、
森の方を指差し、


「今日はあっちの森の方が安心だ。
気をつけろよ」


指を指した方へドンウは
走り去って行った。


ソンジョンは不安そうに
ドンウが走り去った方を見ていた。


「オオカミさん大丈夫かな」


先程まで楽しく話していたのに、
いなくなった寂しさが残っていた。


「あいつはきっと大丈夫だ。
また来年会えるさ」


ソンジョンが不安がらないように、
優しくなだめた。


またしばらく街を回っていると、
キラキラと輝くカボチャのランプが
色とりどりに飾ってあった。


そこには、色んなお化けが楽しく
買い物をしていた。
中には装飾ものや、
お菓子などが見るも飽きない程に
並んでいた。


ソンギュは、初めて見るソンジョンに
声を掛けた。


「中に入るか?
ここは自由に入っていいんだ」


するとソンジョンは、
目をキラキラと輝かせた。


タメ息を漏らすソンヨルに
ソンギュは、


「一緒に入らないのか?」


ソンヨルは困った顔で、
ソンギュを見て言った。


「僕がここに入ったら、
他の魔法使い連中に笑われるから
入らない」


そう言うと、悲しい顔で
ホウキを空中に浮かせた。


ソンギュは、迷子にならないように
ソンジョンの後を追い掛けて行った。


ソンジョンは、お店に並ぶお菓子を
飽きる事もなく、
隅から隅まで眺めていた。


ソンジョンの欲しそうな目に
堪えられなかったのか、


「まだ、見習いにもなってないから
買えないもんな。でも、欲しいなら
買ってやるよ」


そう言ってくれたが、
ソンジョンの顔は少し曇った。


ソンギュは、曇った顔が気になって
言った。


「どうした?遠慮しなくていい。
欲しいならなんでも買ってやるよ」


ソンジョンは少しの沈黙の後、
重い口を開いた。


「僕だけ買って貰うの申し訳ないよ。
魔法使いのソンヨルさんが可哀相」


それを聞いたソンギュは、
ソンジョンの気持ちが
おかしく思った。


そして、
お菓子を眺めるだけのソンジョンに、


「あいつの分も買ってやるから、
欲しいもの好きなだけ選べ。
遠慮はしなくていい」


その言葉を聞いたソンジョンは、
リボンの付いたカボチャの
バスケットに色鮮やかなお菓子を
選びながら入れていった。


ソンギュは、そんなソンジョンを
ただ優しく見つめていた。


カボチャのバスケットは
溢れる程に詰め込まれ、
それに気付いたソンジョンは、
無我夢中でお菓子を入れていた事を
後悔していた。


だがソンギュは、そんな事を
お構いなしに、
ソンジョンが持っていた
カボチャのバスケットを
お店のレジに出した。


「すいません、
プレゼント用にしてください」


そう言うと、お店のお化け店員は、
キラキラ光るカボチャ柄の袋に、
2人のお菓子を分けて入れた。


ソンギュは、チケットを出し、
レアチケットで
棒付きのキャンディーを
一緒に入れてもらった。
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