小説
□義務
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小さい頃から、何度も、何度も、危ない目にあってきた。
でも、それをいつも救ってくれるのは、いつも一人の男…。
髪も、瞳も、身につけている服だって黒いから、まるで死神のような男だ…。
「お怪我はありませんか…?」
このセリフも何回も聞いた。
…お前が助けてくれるから、私が怪我をする事なんて、無いのだけれども…。
ついさっきだって、目の前に銃口を向けられていたのに、私はそれで打ち抜かれることはおろか、擦り傷一つ作ってはいない。
だけども、今日は顔に血がついてしまった。
もちろん、それは私の血ではない。
「あぁ…、血がついてしまいましたね…。申し訳ありません…」
頬に付着している血を見て、お前は、自分のスーツのポケットから取り出したハンカチで拭ってくる。
至極、優しい動作。
目の前にあるお前の顔も、優しく柔らかい。
先程、人一人撃ち殺した人間とは、思えない。
私の頬を拭うお前の手に、そっと触れる。
そして問う。
「お前の義務は?」
「私に義務などありません」
「……」
予想外の答えに少し困惑する。
…いつもなら、『貴方をお守りすること』って言ってくれるのに…。
「ですが、貴方に義務はあります」
「私の…義務…?」
何だ…?それは……。
「貴方の義務は、私に守られることです」
終わり
うちのツォンルーはこんな感じ…。