A guilty
□降り始めた雪
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「…カキ…サカキ」
心地良い声で目覚める。今日は随分冷えてる。暖炉の火が消えているせいで、家の中だというのに ぶるっと身震いする寒さだ。
「アラン様…?」
目を擦りながら起き上がると、
「サカキ、外だ」
「はい?」
「外を見ろ」
言われるがままに薄いカーテンを開ける。
目に入ってきたのは、目を刺すような白い光。キラキラと輝く真っ白な
「雪だ、サカキ」
年相応の笑顔で彼が微笑んでいる。可愛らしい。私はつられて笑って見せる。
「そうですね、とても綺麗です。もっとも」
彼の頬を撫でる。きっと一度外へ出られたのだろう。頬からほのかに雪の匂いがする。
「アラン様の瞳の方が、ずっと綺麗ではございますが」
「…だまれ」
良く晴れた空だ。気温も高いので、これだけ雪が降ってもすぐに溶けるだろう。
白い光の中に身体を預けると不思議と童心にかえれた。
「おいサカキ、外に出てみろと言ったのは俺だが、なにもそこまでしなくても…」
背中がふわふわとして心地良い。
「サカキ、風邪を引くぞ」
「ええ。でも、もう少しこうしていたいのです」
仰向けになると、気持ちいい。
顔を覗かせる彼しか目に入らないからだ。まるで二人だけの世界のように思えた。
私の望む世界、彼と二人きりだけの世界。
そんな世界はないと心のどこかで思いながら、一方でその幻をどこかで望んでいる。
分かっていながらも今は、すぐに溶けてしまう雪に背中を預け、彼と二人だけの世界をこの目に収めていたいのだ。
そう、もう少しだけでいいのだ。