上巻
□迫りくる恐怖
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その時、厨房に入っていたウタが出てきた。
「ちょっと!ミヅキ!なにやってんだ!」
「あぁ?」
怒りを露わにしがウタ近づいてくる。
「ミヅキ!それは僕が最初に見つけた女だ!返せよ!」
「は?お前のモノっていう証拠は?ウタって名前でも書いてあんのかよ、最初に唾つけた奴のモノってルール、キョウイチ達と決めたろ」
「うるさいな!どけって!」
「はいはい、あぁ〜あ、興が醒めたわ」
と、ミヅキという男はハルの上から身を避けた。
一瞬、ウタが助けにきてくれるのかと思ったが、その考えは次の瞬間に打ち消された。
「ハル、お前もだぞ!」
「…!?」
ウタが凄い勢いでハルの首を絞める。弛緩剤が効いているせいで上手く身体も動かせない。
「お前はさっき、僕だけの女になったはずだ!僕の事愛してるんじゃないのかよ!!僕の言うこと訊けないのか!!なあ!!!うぁぁああ!」
この人は一体、何を言っているの…。
徐々に強くなる首を絞める力。
「うっ…!ゴホっ!、あっ…」
すると、ミヅキはため息を漏らし、
「おいおい、加減にしねぇと逝っちまうぜ?今死なれたら退屈すんのは俺らだかんな」
その言葉にウタは、ハッと我に返ったのか、首を絞めていた手の力を緩めた。
「ゴホ!、はぁ、はぁ…っ!」
ウタはハルを起き上がらせ、さっきとは比べものにならない程優しい力で抱きしめた。
「ご、!ごめんな、!僕、お前の事愛してるんだよ、だから…ごめんな、痛かったよな」
「お前のその衝動と被害妄想どうにかなんねぇのかよ、」
その様子を見てミヅキは苦笑している。
《愛している》
そんな事いった覚えはないのに、このウタという男は
まるで妄想の中だけで生きているのか。
恐ろしいものを見た。
そしてなにより、
ハルはウタの腕の中で思った。
狂ってる。